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北朝鮮情勢

中国が切った「中朝軍事同盟カード」を読み切れなかった日米の失敗

2017年9月4日(月)18時04分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

日本は、北朝鮮にとって唯一の軍事同盟国である中国が最後のカードを切ったことを認識していないし、またそれによって北朝鮮が一時、自己抑制的になったのだということも全く読めていない。

日米は高らかに「圧力をかけ続けることが肝要」と言うが、そうだろうか?

これまで国連安保理決議による制裁をやり続け、米韓合同軍事演習もやり続けてきたが、北朝鮮は一向にひるんでいない。

ひるんだのは唯一、中国が中朝軍事同盟カードを切った時だけだった。それも、結局米韓合同軍事演習を始めてしまったので、北朝鮮は今後も上記(1)の条件に抵触しない範囲内で「北朝鮮が言うところの報復」に出るだけだろう。その間に北朝鮮が言うところの「訓練」を積み重ねていくだけだ。

中国はもう動かないだろう

中国としては10月18日に党大会を控えているので、まず今は何も動かないだろう。来年3月5日に全人代(全国人民代表大会)が始まり、最終日の14日に選挙を行なって「国家主席」と「国務院総理」が選ばれる。その時から二期目の習近平政権に入るわけだが、それまでは大きな行動をしないだろうと推測される。

もちろん中国にはまだ石油の輸出を断つ「断油」というカードがあるが、一部の航空機燃料としての「断油」は早くからしているが、民間生活も含めた「断油」カードを単独で使うことはないものと思う。なぜなら北朝鮮のミサイルの矛先が北京に向くからだ。国連安保理による決議なら、一定程度は国連のせいにすることもできるが、単独では行なわない。

アメリカの軍事行動

トランプ大統領の気まぐれツイートは一応無視することとして、マティス国防長官は「軍事行動を排除しない」と述べているようだ。

「排除しない」とか「すべての選択肢はテーブルの上に載っている」と言いながら、結局「犠牲があまりに大きすぎるから...」と言って実行しないのは、北朝鮮をこの上なく勇気づけるだけだ。「どうせ、できないんだ」と舐められてしまう。

言ったからには、そして本当にアメリカの軍事技術が高いなら、核・ミサイル施設のピンポイント攻撃や「斬首作戦」などを実行するしかないだろう。言っておきながら実行しないことほどまずいものはない。北朝鮮を利するばかりだ。

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