英に迫るスタグフレーション 日系企業はコスト高とEU離脱で苦慮
外資誘致と財政負担増
英国は雇用確保の目的から、日本を含む外資の製造業に特別な措置を講じる計画だが「大きな政府は財政に負担をかける。離脱が現実になれば経済的な損失が大きいことを、ポンド相場は織り込んでいくことになるだろう」と宇野氏はみている。
近年の英国の産業モデルは、おカネと人材を国外から誘致するという、外資中心のウィンブルドン方式で、ロンドンのシティを中心とする金融業はその最たるものだった。しかし、このビジネスモデルは世界金融危機で行き詰まった。
その後の金融緩和によって、英国では不動産や株価が上昇したが、貧富の差が拡大し、移民労働者が問題視されるなか、「ブレグジット」決定に至った。
「ブレグジットは、人とカネの動きを遮断するものだ。移民の流入は止められるかもしれないが、英国にとって必要不可欠な大陸市場を切り離せば、残るのは、巨大な財政赤字と経常赤字だけだ」と、国内大手機関のファンドマネジャーは予測する。
投資家の間では、高金利通貨を志向する風潮はあるが「スタグフレーションの通貨は運用対象外だ。英国にとって本当のカオスはまだ始まっていない」(同)という。
揺らぐ「巨大市場へのゲート」の地位
安倍首相は8月31日にメイ英首相と会談し、原発建設の協力推進を確認した。日本経済新聞の報道によると、日立製作所が英国に建設する原子力発電所について、日本のメガバンクが融資する建設資金を日本政府が日本貿易保険を通じて全額補償するという。先進国向け案件の貸し倒れリスクについて、国が全て引き受けるのは異例だ。