最新記事

核実験

北朝鮮の核開発、背後に金正恩と親密な科学者2人の存在

2017年9月7日(木)09時41分

9月4日、北朝鮮の核・ミサイル開発では、以前から海外でブラックリストに載っている国内の科学者2人が重要な役割を担っていると専門家はみている。写真中央は、研究施設で科学者らと会う金正恩・朝鮮労働党委員長。昨年3月、KCNA提供(2017年 ロイター)

北朝鮮の核・ミサイル開発では、以前から海外でブラックリストに載っている国内の科学者2人が重要な役割を担っていると専門家はみている。

金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、この2人を含めた技術系出身の官僚と密接な関係を築いており、このことが開発のスピードアップにつながったとみられる。

3日の核実験の直前に朝鮮中央通信が配信した写真には、水爆とみられるピーナッツ型の物体を視察する金氏の傍らに2人の科学者が写っていた。元寧辺原子力研究所所長のリ・ホンソプ氏と党中央委副部長のホン・スンム氏だ。

ロイターが北朝鮮の国営メディアの報道を調べたところ、金氏の主導で北朝鮮の核開発のペースが上がるにつれて、リ氏とホン氏のメディアへの露出が増えていることが分かった。

両氏は昨年1月に行われた4回目の核実験後に金氏からメダルを授与された。その2カ月後には、大陸間弾道ミサイル(ICBM)への搭載が可能とされる弾頭の模型を視察する金氏にそろって随行した。

北韓大学院大学のヤン・ムジン教授は「ホン氏は党幹部として核開発を主導し、リ氏は実務レベルで水爆などの核実験を担当しているようだ」と話す。

北朝鮮問題の専門家によると、ICBM開発では国内の兵器専門家が最前線に立ち、リ氏やホン氏もこうしたグループに属している。

金氏の父親の金正日(キム・ジョンイル)氏や祖父の金日成(キム・イルソン)が兵器開発を小規模な専門家グループや中間管理職に任せることを好んだのに対して、金正恩氏は科学者と個人的なつながりを深めており、兵器の試験や現場の視察に技術系出資の官僚が随行する場面が多いという。

部下と直接現場に赴く金氏のスタイルによって核やミサイルの開発のペースが上がり、科学者は金氏と個人的な関係を強めていると専門家はみている。

北朝鮮問題専門家のマイケル・マッデン氏は「金氏は自ら現場に出て、科学者との個人的な関係をアピールしている。このために科学者は兵器開発で大きな達成感を得ている」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ワールド

トランプ氏、中国による戦略分野への投資を制限 CF

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 2
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映像...嬉しそうな姿に感動する人が続出
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 7
    見逃さないで...犬があなたを愛している「11のサイン…
  • 8
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 9
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 10
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 7
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 8
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中