モスル奪還作戦、写真で見るISISとの戦いの恐怖
「避難した住民がイラク軍特殊部隊のもとに到着するなり、男性はシャツを上げろと命じられた。体に爆弾を巻いていないことを確かめるためだ。自爆テロはISISの常套手段で、イラク軍兵士は駆け込んでくる住民を押しとどめようと空に向かって銃を撃ち、アラビア語で怒鳴った。写真の父親は取り乱し半狂乱になっていた。彼は半袖のシャツを着て女の子を抱いていたので、ISISと疑われることなく無事難民キャンプに移送されるはずだ」
【参考記事】ISIS「人間の盾」より恐ろしい?イラク軍によるモスル住民への報復
ドローンの後にはロケット弾が
モスル奪還作戦でISISの拠点に向けてロケット弾を発射するイラク軍(2017年3月11日撮影) THAIER AL-SUDANI-REUTER
<撮影者、サイエル・アル・スダニの言葉>
「攻撃があったのは真夜中、イラク軍がISISからモスルの行政庁舎を奪還しようとしていた時だった。破壊されたモスル美術館の写真を撮っていた時、上空にISISのドローンを見つけた。ロケット弾が飛んでくる恐れがあるため、我々は一斉に地面に伏せた」
「私はその時に手を切り、治療のため皆で車に戻った。イラク軍が私たちには目視できない距離にあるISISの標的を目がけてロケット弾を発射していたので、撮影を再開した。この写真は過酷な戦闘を象徴する力強い1枚になると思った。記者会見とは別世界の本物の戦争を伝えている。現場は100%危険で、写真を送るインターネットもほとんど繋がらない状況だ」
大学も破壊
ISISに破壊されたモスル大学の前を歩く人々(2017年4月10日撮影)
.MARKO DJURICA-REUTERS
<撮影者、マルコ・ジュリカの言葉>
「4月10日、ロイター通信の取材班はモスル東部に入った。かつてはイラク北部の教育の中心で、現在は廃墟となった地元の名門校モスル大学について取材するのが目的だった。到着した途端、まずキャンパスの広大さに圧倒され、その破壊の凄まじさに立ち尽くした。少なくとも10の大きな校舎といくつかの小さい校舎が瓦礫になっていた。
「入口を警備するイラク軍兵士たちは、銃を掃除したりお茶を飲んだりしていた。化学学部が入っていた校舎の焼け跡から、備品や器具を運び出そうとしている人々を見かけた。彼らはここで教えていた大学教授で、使えそうなものは何でも回収しようとしていた。掃除をする教授や、絶望している教授もいた。大学がすぐに元通りになる可能性はないとわかっているため、感情的になっていた」
(翻訳:河原里香)