トランプのエルサレム訪問に恐れおののくイスラエル
だが、右も左もようやく目が覚めた。サウジアラビアなどアラブ諸国との同盟関係を敵に回してまで、エルサレムのイスラエルへの帰属を認めるつもりは米政府にはない。
トランプの能力で中東和平は無理
和平実現には2国家共存しか選択肢がないのは誰の目にも明らかだが、それは右派(特にユダヤ教右派)が最も恐れる解決策でもある。
左派は左派で、たとえトランプが誠心誠意和平のために尽くしたとしても、彼の能力では複雑なイスラエル・パレスチナ問題を解決に導くことはできないと見限り始めた。いくらアメリカの大統領といっても、公然と弾劾要求の声が上がるほど疑惑が相次ぐトランプでは話にならない。
イスラエル国民は、トランプが今週末からの初外遊でエルサレム旧市街にあるユダヤ教の聖地「嘆きの壁」を訪問するつもりだと知り愕然としている。素人外交としか言いようがない。
【参考記事】トランプはどこまでイスラエルに味方するのか:入植地問題
第3次中東戦争以来イスラエルが実効支配しているエルサレム旧市街を訪れるなど、正気の沙汰ではない。かつてどのアメリカ大統領も来たことがない。かつてのパレスチナの中心都市でイスラム教の聖地でもあるエルサレムは、まさに火薬庫だ。
もしイスラエルの案内でエルサレムを訪ねれば、この都市はイスラエルのものと認めると、アラブ世界に向かって宣言するようなもの。
トランプの言葉はあてにならず、最終的に何をするかは予測不可能とあって、イスラエルでは失望が広がっている。かつては期待をもってトランプ政権の動きを追っていた人々も気付き始めた。大統領就任から100日余で、トランプは既に「レームダック(死に体)」かもしれないと。
アメリカで弾劾手続きがどう進むのか、大統領が職務を果たせないときは誰が代わりになるのか、イスラエルで理解する人はほとんどいない。それでも、これほど早々に政治生命が危うくなるような大統領には、右派であれ左派であれ、その最小限の希望さえ叶えられないであろうことはわかる。
トランプ訪問への期待は今、トランプが及ぼす災厄への恐怖に変わっている。
(翻訳:河原里香)
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