サイバー攻撃、欧州とアジアの企業は備え薄く甚大な被害も
サイバー保険は通常、データを侵害された人に通知したり、風評被害に対処するため広告代理店を雇ったり、被害者のクレジットカードの利用状況をチェックする手配を整えたりするコストのほか、訴訟費用もカバーする。
サイバー保険は利益率の高いビジネスだ。例を挙げると、保険会社Sciemusは過去に、データ侵害で1000万ドルを補償する保険料は約10万ドルだとしていた。また、物的損害を受けた攻撃を補償する場合の保険料はその7倍だという。
そのほか、独アリアンツ 、米国のAIGやチャブ、スイスのチューリッヒ、ビーズリーやヒスコックスのような英ロイズ加盟の保険会社がサイバー保険を販売している。
高まる需要
欧州では今回の大規模サイバー攻撃以前から、EUがデータ侵害の報告を企業に義務付ける一般データ保護規則を、2018年半ばに適用した後には、保険への需要が高まるとみられていた。
だが、保険会社の競争力が激しく、また今回のサイバー攻撃でどの程度保険が適用されるのかについて不安が残るなか、保険料への影響はあまり聞こえてこない。
保険会社は、規約や適用外に関する言葉選びだけでなく、引き受けるリスクの査定に対し、より慎重になる可能性が高いと、カリニッチ氏は指摘。
「彼ら(保険会社)は、最もリスクに備えている企業を選びたがるだろう」とカリニッチ氏。それ以外の企業も保険加入の資格はあるだろうが、適用外とされる項目が多くなる可能性があるという。
例えば、企業が保険会社に連絡なく身代金を支払った場合、保険会社は適用を認めないことにするかもしれない。
「実に複雑さを極める内容となるかもしれない。数百万ドルを失うことにもなりかねない」とカリニッチ氏は語った。
(Carolyn Cohn記者、Suzanne Barlyn記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)