WD、東芝の半導体事業売却差し止めを国際裁判所に申し立て
同社は「支配権の変更に同意がいらなくなるのは、あくまで契約主体である東芝本体が売却される場合であり、今回の子会社売却には適用されない」と指摘。自社の傘下にあるサンディスクの同意なしに東芝が事業を売却するのは契約に反しているとしている。
声明の中でWDのスティーブ・ミリガン最高経営責任者(CEO)は、「仲裁による差し止め申し立ては、我々が最も希望する選択肢ではない」としながらも、「問題解決に向けた他の努力はすべて失敗に終わった。今は法的な手段に訴えることが次に必要なアクションであると信じている」とコメントしている。
東芝は米原発子会社ウエスチングハウスの破綻などによる巨額の損失を穴埋めするため、同事業を2兆円以上で売却したい意向だ。すでに米ファンドのコールバーグ・グラビス・ロバーツ(KKR)が日本の官民ファンドである産業革新機構(INCJ)との共同応札を検討するなど、複数の陣営が関心を示し、売却先の選定交渉が続いている。
ある関係者によると、WDも買収の意向を示しているが、同社の提示額は2兆円を下回っているという。WDに対しては、KKR・INCJ連合に少数株主として参加するよう日本政府が打診しているが、WD側は同事業の支配権を要求しており、交渉は進んでいない、と別の関係者は話す。
国際仲裁裁判所による「仲裁判断」は最終判決に相当する結論で、それに対して上訴することはできない。入札手続き差し止めの命令が下れば、東芝のメモリ事業売却計画が進まず、来年3月末までの債務超過の解消が困難になるだけでなく、上場廃止のリスクが高まる。
さらに、分社化そのものが無効とされれば、東芝メモリの株式を担保に差し入れて主要行からの融資を確保しようという東芝の思惑が外れる事態も予想され、経営再建の先行きに一段と不透明感が増す懸念がある。
(山崎牧子 取材協力: Liana Baker)