文在寅とトランプは北朝鮮核で協力できるのか
文にとって、トランプ政権の対北強硬姿勢が和らいだのは朗報だ。米政府側も、早期の米韓首脳会談開催の可能性を除外しないという。事実、文は大統領選中に、北朝鮮問題の解決につながるならワシントンより先に平壌を訪問するとまで言った。従ってトランプ政権は、北朝鮮問題で文政権と足並みが乱れるという心配はしていないようだ。
文大統領の誕生をトランプ政権が静観する理由の一つは、文は「太陽政策2.0」を唱えながらも教条的にはならないと見ているからだ。ホワイトハウス関係者によると、文は北朝鮮が核兵器開発を飛躍的に進展させており、このままでは厄介なことになると承知している。文はもともと在韓米軍のTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備に否定的だったが、大統領選中は反対を抑え、アメリカ側が大統領選までに搬入・稼働した場合は大統領就任後に配備を追認する方針を示した。それを受けて、アメリカはTHAADの稼働を韓国大統領選前に前倒しした。
民主主義国家としてまだ若い韓国では、対北朝鮮で強硬路線と融和路線の政権が入れ替わってきた。韓国の同盟国は、そうした変化に慣れっこのはずだ。自分の柔軟さを自画自賛してきたトランプのことだから、文が後押しすれば金正恩との直接対話に舵を切るかもしれない。
韓国世論に鈍いトランプ
対米関係では、文は国内の政治動向を受けて注意深く政策を実施するしかない。北朝鮮情勢をめぐる緊張が高まるなか、トランプはTHAAD配備の費用として10億ドルを支払うべきだと発言し、韓国世論の反感を買った。H.R.マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)がその必要はないとして、火消しに回った。トランプが韓国と締結している2国間の自由貿易協定(FTA)は不公平だと繰り返し愚痴るのにも、韓国世論は反発している。文はかねてから、韓国はアメリカに「ノー」と言う術を身に着けるべきだと主張していた。トランプにFTAの再交渉を持ちかけられたら、文は本当に「ノー」を突き付けるかもしれない。
だがアメリカと韓国にとって最も差し迫った課題は、北朝鮮の若き指導者である金正恩と、現実味を帯びる北朝鮮核という2つの脅威に、どう対処するかだ。トランプ政権は北朝鮮への制裁を強めたい意向で、ティラーソンいわく、とりわけ中国が独自制裁を科すことを期待している。ところが文は、北朝鮮との経済協力を活発化させることを公約に掲げた。それを両立させるのは不可能だ。トランプ政権ではいまだに駐韓米大使のポストが空席だ。仲介役がいない分、米韓首脳の電話会談はすぐに実現するかもしれない。
(翻訳:河原里香)