習近平は笑っているべきではなかった――米国務長官、シリア攻撃は北への警告
習近平は笑っている場合ではなかった――習近平の惨敗?
米中首脳会談の間、トランプ大統領と対等に渡り合っていたことを中国人民に示すために、習近平国家主席はつねに「笑顔」を保ち続けていた。今年秋に行われる党大会のために「威信」を示さなければならなかったからだが、その「笑顔」に気を配るあまり、肝心の北朝鮮問題に対して頭が回らなかったのか。ぎこちない「笑顔」より、北朝鮮問題の影響の方が決定的だ。
二日目のテーブルを挟んだ正式会談で、王滬寧氏が隣に座っていたときには、習近平国家主席は「言うべきこと」をきちんと言っていたし、トランプ大統領の「アメリカ単独で武力攻撃をする」という言葉に対してさえ、「米朝会談が優先される」と主張したほどだ。
中国はもともと、「トランプの口から何が飛び出してくるか分からないので、その時には笑顔で流してしまおう」という腹づもりではあった。しかし、まさか突然のシリア攻撃が会談中に断行されるというのは、予想もしなかっただろう。
「トランプvs習近平」という世界二大大国の勝負において、第一戦は「習近平の負け」とみなすしかないだろう。
「新型大国関係」を「トランプ・習近平」で形成しようと思っていた「中国の夢」は、この時点で頓挫したとしか、言いようがない。
危機は目前だが、抑止力も?
ただ、北朝鮮への武力攻撃は、シリア攻撃のように単純にはいかない。
中国やロシア、韓国が直接の影響を受ける。果たして化学兵器を使用したのがアサド政権だったのか否かの検証も十分ではない。そして何よりも北朝鮮は核を持っている。北朝鮮の敵はアメリカ。まず真っ先に在日米軍基地を狙うだろう。
一方、米中間の貿易高も尋常ではない。3月11日の中国商務部の発表によれば、2016年の中米貿易高は5196億米ドルで1979年の国交正常化時の207倍に達するという。両国の経済規模は世界の40%を占め相互投資額は世界の30%に及ぶとのこと。
トランプ政権の人事がまだ固まっておらず、アメリカ国民の意見もあるだろう。抑止要素がまだまだあるものの、やはり危機は目前に迫っている。
拉致問題も抱えている日本にとって、いま何ができるのか、真剣勝負の時が来ている。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。