最新記事

ロンドン襲撃テロ

テロ直後にトランプの息子がロンドン市長を批判、でもなぜ?

2017年3月23日(木)21時03分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

父ドナルド・トランプと話す長男のドナルド・トランプ・ジュニア(2017年1月) Lucas Jackson-REUTERS

<ロンドンでテロが起きた直後、トランプ米大統領の息子が「ロンドン市長が『テロは生活の一部』と発言」とツイッターで批判。そのタイミングにも内容にも大いに問題があるツイートだ>

3月22日午後2時40分(現地時間)、ロンドン中心部の国会議事堂周辺でテロが起きた。容疑者を含め死者は4人。犯行声明はまだ出ていないが、警察当局は「イスラム主義者に関連したテロ」との見方を示し、すでに7人を拘束している。

テリーザ・メイ英首相はすぐさま声明を発表。「ロンドン市民も、世界中からこの偉大な都市を訪問している人々も、明日がきたら起き上がって普段通りに行動する」と、不屈の精神を訴えた。

【参考記事】英議事堂テロ、メイ首相が不屈の精神を訴え<声明全文>

ロンドン市長のサディク・カーンも同日19時45分、声明を発表した。「ロンドンは世界一素晴らしい都市であり、私たちを傷つけ、私たちの生活を破壊しようとする者に対して、私たちは団結している。......ロンドン市民はテロに屈しない」

だが、本人のこの声明が出るより前に、カーンを思わぬ形で公の場に引っ張り出した人物がいる。ドナルド・トランプ・ジュニアだ。

ドナルド・トランプ米大統領の長男であるジュニアは、テロ発生の約2時間後、ツイッターにこんな投稿をした。「冗談だよな?! テロ攻撃は大都市の生活の一部と、ロンドン市長のサディク・カーンは言った」

ジュニアのツイートには、昨年9月の英インディペンデント紙の記事へのリンクが付いている。記事の見出しは「サディク・カーン:テロ攻撃は大都市の生活の"本質的部分"とロンドン市長」。

テロの発生直後に、まるでカーンがテロの後に発言したかのように過去の記事を持ち出したことで、当然ながら大バッシングを受けた。だが、問題はそれだけではない。確かに当時の見出しとジュニアのツイート内容は似通っているが、記事を読めば「テロは生活の一部」という表現がいかにミスリーディングかわかる。

この記事は、29人が負傷した連続爆発事件がニューヨークで起きた後に書かれたもの。事件の報告を聞き、眠れない夜を過ごしたというカーンはこう語っている。「グローバルな大都市の生活の本質的部分は、この種の出来事に備えなくてはいけないということ、用心深くあらねばならないということ、そして懸命な働きをしてくれる警察や治安当局を支えなくてはいけないということだ」

すなわち「テロは生活の一部」ではなく、「テロへの備えは生活の一部」というのが、カーンが当時示した見解だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 6
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 10
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中