最新記事

欧州債務危機

ギリシャ再びデフォルトの恐れ 返済前に改革審査難航

2017年2月9日(木)09時15分

 2月7日、ギリシャ国債の民間投資家は、デフォルト(債務不履行)はもう二度と起きないという5年前に欧州当局が表明した約束を信用できなくなっているようだ。写真はユーロ硬貨とギリシャ国旗。ボスニア・ヘルツェゴビナのゼニツァで2015年6月撮影(2017年 ロイター/Dado Ruvic)

ギリシャ国債の民間投資家は、デフォルト(債務不履行)はもう二度と起きないという5年前に欧州当局が表明した約束を信用できなくなっているようだ。

こうした強い約束があったからこそ、ギリシャは民間投資家に対して債務の大幅な元本削減を実施してからわずか2年で国際金融資本市場へのスピード復帰を果たした。

その際に国債を買った投資家の理屈は単純で、2012年に債務再編の適用を免れた公的債権者が、今度は痛みを引き受けるべきだというものだった。

しかし新たなギリシャ国債の最初の返済が7月17日に予定される中で、ギリシャと公的債権者を代表する欧州連合(EU)、国際通貨基金(IMF)の話し合いは紛糾していることから、国債価格は公的債権者のリスク負担が実現しないリスクを織り込む水準まで下落している。

投資家にとって一番の懸念は、ギリシャの改革審査が7月初めまでに完了しない事態となれば、同国は債務返済の資金が確保できなくなるという点だ。

約300万ユーロのギリシャ債を保有するLBB─インベストのポートフォリオマネジャー、ルッツ・ローマイヤー氏は、ギリシャは債務を返済すると予想しながらも、果たして返済できるかどうか「若干の疑念」があると打ち明けた。

eMAXXのデータによると、このほかカルマニャック・ジェスティオンやルーミス・セイレス、パトナム・インベスト・マネジメント、PIMCOもギリシャ債に投資している。

ギリシャは最新の第3次金融支援を受け入れる見返りにさまざまな改革を実行することに合意したが、今年の選挙を前に国内有権者から反発を受けるのを恐れて支援条件を守っていない。

こうした中で7日の国債価格は額面当たり0.95ユーロで推移。償還期限が近づいて本来なら額面をやや上回っているべきところ、異例の低水準となった。トレーダーの話では、6%のデフォルト確率が織り込まれている。

ギリシャのクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のプレミアムも急騰し、今後5年間のデフォルト発生確率を50%近くと示す水準にある。

デフォルト確率は今後数週間でさらに高まってもおかしくない。複数の欧州当局者は、20日に開く次回のユーロ圏財務相会合までに、ギリシャは問題点を解決する必要があると警告している。これを過ぎると3月のオランダを皮切りに、9月のドイツまで主要国が相次いで国政選挙に突入し、交渉が政治的に難しくなるとみられるからだ。

<時間との闘い>

1月26日のユーロ圏財務相会合では、債権団がアテネに戻って改革審査を完了するスケジュールを設定できなかった。ギリシャ側は今月7日、債権団の要求の一部は「非論理的」と批判し、歩み寄りの気配は見えない。

ソシエテ・ジェネラルのエコノミスト、Yvan Mamalet氏は「EU諸国の政治日程が立て込んでくれば、改革審査を完了するのは極めて困難なことが判明するだろう。だからこそ、3月初頭が合意に達する可能性がある最後の時期に思える。これを過ぎれば、7月の債務返済も厳しくなる」と指摘した。

ギリシャ第3次金融支援にIMFが参加するかどうか分からないことも、同国の返済ができなくなるリスクを高めかねない。IMF内には、ユーロ圏が課した財政目標に反対し、ギリシャに債務軽減措置を提供すべきだとの声がある。

ギリシャの主要債権者であるドイツは、IMFの関与は第3次支援に必要不可欠だと強調している。ショイブレ財務相は、ビルト紙のインタビューで、IMFが手を引くようなら、ギリシャのユーロ圏離脱に賛成するとまで言い切った。

ショイブレ氏の発言は極端かもしれないが、UBSのストラテジストは、IMF抜きの新たな合意が成立したとしても、欧州各国の議会が承認するまでに時間が必要で、それ自体がギリシャのデフォルトリスクを高めると予想している。

(John Geddie記者)



[ロンドン 7日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ショルツ独首相、2期目出馬へ ピストリウス国防相が

ワールド

米共和強硬派ゲーツ氏、司法長官の指名辞退 買春疑惑

ビジネス

車載電池のスウェーデン・ノースボルト、米で破産申請

ビジネス

自動車大手、トランプ氏にEV税控除維持と自動運転促
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中