【写真特集】世界が抱える環境移民という時限爆弾
<セイス村(エチオピア)>ケニア国境沿いの村々ではずっと降雨がなく、人々は食べ物も飲み物も手に入らず困窮している。飢餓で最も苦しみ、犠牲になるのは老人と子供だ
<環境の悪化で都市へ移住する人々の現状を世界各地で追った>
環境の悪化や気候変動による自然災害などのため住む場所を離れなければならない「環境移民」。彼らは不発弾のような存在であり、遠くない将来、世界はその経済的・社会的な負担に直面するだろう。
現在5000万人いる環境移民は50年までに45人に1人、つまり2億人に上るとされている。その90%は途上国の人々。彼らは豊かな国ではなく、自国の都市部へ移り住んで新たな収入の道を探ろうとする。08年には史上初めて世界の都市人口が農村人口を超えたが、今後は気候変動と環境移民で都市部はさらに肥大化していくだろう。
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写真家アレッサンドロ・グラッサーニは、迫りくる環境移民の問題について長期取材を行った。目的は、地球と都市の環境がどのように悪化しているかを人々に知ってもらうこと。そして都市へと移る環境移民たちの物語を記録し、社会に与える深刻な影響を明らかにすることだ。
モンゴル、バングラデシュ、ケニア、ハイチは環境移民によって最も打撃を受ける国々だという。グラッサーニもこれらを取り上げ、厳しい環境と闘う地方の人々と、首都のスラムで暮らす貧しい環境移民の姿を対置している。近い将来、状況はさらに危機的になるはずだ。
KENYA/ETHIOPIA
ケニアの農村人口は気候変動により、アフリカの中でも特に深刻な打撃を受けている。干ばつに加え、牧畜の餌や水をめぐる部族間の抗争に苦しむ人々は、首都ナイロビでのよりよい暮らしを夢見る。09年の国連人間居住計画の発表によれば、ナイロビにいる環境移民の74%が91~08年に移住してきた人々だ
セイス村(エチオピア)
エチオピアのマリル族が住む地域では日照りのせいで食べ物も飲み物もなく、日々、何十頭という動物が死んでいく
ナイロビ(ケニア)
首都ナイロビでは面積の5%を占めるスラムに人口の約60%が密集。アフリカ最大級とされるキベラスラムでは、約100万人が非人道的な環境下で暮らす。気候変動や環境移民の影響を受け、ナイロビの人口は急速に増加している
ナイロビ(ケニア)
ナイロビ第2のスラムであるマサレの人口は約50万人。この辺りではトタン小屋に交じって、1つの部屋に多くの人がひしめいて暮らす建物が並ぶ