最新記事

アメリカ政治

「反米」のレッテル貼るトランプ口撃、企業はツイートに恐々

2017年1月14日(土)09時37分

 トランプ氏は大統領選で勝利して以来、フォード・モーター、トヨタ自動車<7203.T>、ゼネラル・モーターズ(GM)、ユナイテッド・テクノロジーズ、レックスノードといった企業を、メキシコでの製造や雇用の海外流出を巡って槍玉に挙げた。

 ロッキード・マーチンとボーイングについては、戦闘機のコストが高過ぎると攻撃した。

 政府との関係やPRについて助言する会社は、数多くの企業からトランプ氏の怒りを買う要素がないかについて助言を求められている。そうした要素としては、製造拠点の海外移転に加え、消費者向けの値上げや同業他社に比べた税率の低さなどが挙げられるという。

 戦略的コミュニケーション企業、サード・バービネン・アンド・カンパニーのジョージ・サード会長兼CEOは「過去数週間で、文字通り1ダースほどの企業から対策について聞かれた」と語った。

 助言会社によると、企業幹部は株主価値の最大化だけに集中するのではなく、国益についても考える必要が出てきている。

 フォーチュン500社に入っている米企業のCEOは「CEOらは取締役会に対し、愛国的な印象を与える必要があるのだと訴えるようになった。レイオフや製造拠点の移転など、際どい課題がある場合には、取りやめる方を選ぶだろう」と話す。

先手を打つ

 サード・バービネンのサードCEOは顧客企業に対し、トランプ氏の「ツイッター戦争」に応じないだけでなく、同氏の先手を打って株主や従業員、顧客とブログやSNSを通じて直接対話するよう助言している。

 企業は既に雇用創出の成果を従来より大声で宣伝し始めており、トランプ氏に花を持たせるよう意図している社もある。

 フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は8日、米国で2000人の雇用を生み出す計画を発表した。関係筋によると、これは海外生産についてトランプ氏から批判される可能性を見据え、その前に雇用創出の報道が流れるようにしたいというマルキオーネCEOの意向が反映されている。

 トランプ氏は先日、メキシコでの生産を巡りトヨタを批判したばかりだ。

 ソフトバンクグループの孫正義社長が12月、米国への巨額投資を約束した後、トランプ氏はツイッターで「われわれが選挙に勝っていなければ、彼はこのようなことはしなかった」と勝ち誇った。

 前出の大手企業CEOは「大統領には逆らいたくない。ましてや(トランプ氏のように)声の大きい大統領には」と打ち明けた。

 (Lauren Hirsch記者 Mike Stone記者)

[ニューヨーク/ワシントン 10日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米プリンストン大への政府助成金停止、反ユダヤ主義調

ワールド

イスラエルがガザ軍事作戦を大幅に拡大、広範囲制圧へ

ワールド

中国軍、東シナ海で実弾射撃訓練 台湾周辺の演習エス

ワールド

今年のドイツ成長率予想0.2%に下方修正、回復は緩
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中