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直接民主制一般人に大切な決断を託す国民投票はこんなに危険
Dylan Martinez-REUTERS
<ブレグジットやハンガリーの難民受け入れ拒否など国民投票で国民が出す愚かな結果を見るにつけ、ナチスドイツを思い出す> (写真は2014年、英連邦からの独立の是非を問う住民投票を控えたスコットランド人)
アドルフ・ヒトラーは、ナチスドイツの支配を強固なものにするために4度の国民投票を実施した。第2次大戦が終わるとドイツでは、もう二度と市民の手に政治をゆだねる直接民主制には戻るまいと誰もが心に決めていた。そして、国民に選ばれた代表に決定権を託したのだ。
【参考記事】EU離脱派勝利が示す国民投票の怖さとキャメロンの罪
ドイツの人々は知っていたのかもしれない。今年になってわれわれが何かを学んだとすればそれは、国民投票を行って重要な決定を一般人に託すことの危険性だ。イギリスのブレグジット(EU離脱)を決めた国民投票はもちろんのこと、先週末のコロンビア和平の是非を問う国民投票、ハンガリーの難民受け入れに関する国民投票にいたるまで、われわれは国民が馬鹿な選択ばかりするのを見てきた。コロンビアでは半世紀続いた戦争を終わらせる和平合意が否決され、ハンガリーは難民受け入れを拒絶した(ただし投票率が低く成立しなかった)。
愚かな国民投票・住民投票は他にもある。
【参考記事】ヨーロッパで政争の具にされる国民投票
スイス:モスクのミナレット建設禁止
スイスでは2009年、右派政党の扇動により、モスクがミナレット(尖塔)を建設するのを禁止するべきかどうかという「重大な」問題が国民投票にかけられることになった。有権者の57.5パーセントがミナレット禁止を支持し、ミナレットの建設禁止はスイス憲法に書き加えることになった。
当時のスイスには約150のモスクがあり、そのなかでミナレットがあるのはたった2棟だった。ミナレットは、礼拝を広く呼び掛けるためのもので、それがスイス人には脅威に感じられたわけだが、どのモスクも呼び掛けには使っていなかった。
クリミア半島のロシア併合
2014年にロシア軍がクリミア半島を制圧して1カ月ほど経ったころ、クリミアではロシア連邦への正式併合を決める住民投票が行われた。ロシアのウラジミール・プーチン大統領は、クリミアの人々の望みを尊重すると述べたが、幸運なことに住民の95.5パーセントがロシア併合に賛成した。アメリカはこの住民投票と併合は違法だと主張している。
カリフォルニア(米)同性婚の禁止
カリフォルニアでは2008年11月、先に同性婚を合法と認めたカリフォルニア州最高裁の判決を、住民投票が覆した。同性カップルによる結婚は禁じられ、過去の同性婚をすべて無効になった。その後2013年に同性婚は復活したが、いつまた馬鹿な住民投票や国民投票が平穏な市民生活の妨げになるかわからない。