アップルの税逃れ拠点、アイルランドの奇妙な二重生活
2016年9月9日(金)20時00分
これは微妙な判断だ。アイルランド政府は事実上、棚ぼたの税収を拒絶していることになる。欧州委員会は、追徴分の130億ユーロはIMFなどへの借金返済に充てなくていいと明言している。丸々国民生活の向上のために使える財源なのだ。医療サービスなら、元のレベルに戻して1年半維持できる。
すでに1万1000人が、政府に控訴をやめるよう求める嘆願書に署名している。「政府は、世界で最も金持ちの企業ではなくアイルランド国民のためにあるべきだ」という彼らの主張はもっともだ。
アイルランドは、既に課税強化の方向へ舵を切りつつある。多国籍企業を呼び込むための低税率や税制優遇措置は、1980~1990年代、アイルランドがまだ欧州の辺境の貧困国だったときのもの。おかげで今は、アイルランドには高学歴で高スキルの労働者があふれ、テクノロジーと金融と製造業のハブという評価を得た。税制の抜け穴の多くは、すでに閉じられている。欧州委員会の判断は、その正常化プロセスを加速するだろう。
そのとき、多国籍企業のアイルランドと、景気後退で病んだアイルランドは、和解できるのだろうか。わかるのは、誰もが応分の税金を払うようにはなるということだ。
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