米国テック一強時代は終わり、米中二強時代が始まった
Facebook CEOのマーク・ザッカーバーグと、アリババ・グループの創業者ジャック・マー Natalie Thomas-REUTERS
70年ほど前に半導体産業が米国西海岸で萌芽して以来、新たな技術や産業の創出を世界が米国に一貫して「アウトソース」してきた。しかしその「米国IT一強時代」がいま、終わった。
IT産業における次代を担うスタートアップの資金調達額において、ついに中国が米国と並んだのである。
のみならず、
・未上場企業の時価総額世界分布
・上場インターネット大手企業規模
・R&D投資額
等の重要データにおいても中国が米国に肉薄している。以下に順番に見ていこう。
スタートアップ資金調達額
まず昨年の米中を比べると、全米ベンチャーキャピタル業界とPwCがやっている MoneyTree 発表による両国のスタートアップ資金調達額は米国5.9兆円に対して中国は3.7兆円と米国の6割超まで肉薄していた。特筆すべきは、たったの2年前まではそれが0.5兆円弱しかなかったことである。2年で8倍弱の驚異的な成長を見せたのだ。
さて今年である。米国の上半期は既に発表があり前年並みの3.1兆円であった。
これに対して中国はMoneytreeからは未発表であるものの、アジアの大手テックメディアTechin Asiaからは2016年上半期が3.7兆円と発表されている。これが正しければ中国は昨年1年分を既に半年で達成し、かつ米国を抜いた、という事になる。
しかしこのTechin Asiaの昨年データを見ると4.7兆円と上記Moneytree報告の3.7兆円より27%ほど高い。ではその割合だけ本年上半期から差し引いてみると(3.7兆円×1.27倍=)2.9兆円となり、米国上半期の3.1兆円とほぼ並んだと事となる。
いずれにせよ正確な比較はMoneytreeの発表を待ちたいが、この他にも中国は政府による30兆円VCファンドという途方もない計画も発表していたり、トレンドとしても昨年から落ちていない事や、一方で米国は昨年4Qから足踏み状態にある事などからみても、ほぼ誤差の範囲で米中のスタートアップ投資金額は今年拮抗したと言って間違いないだろう。
これは歴史的な瞬間である。今まで国全体のマクロ経済や軍事などと同様に、テック・スタートアップでも米国だけが世界唯一無二の突出したスーパーパワーであった、その状況が変わり米中の2大スーパーパワーが拮抗する時代となったのである。