決死の亡命を果たした北朝鮮公使、韓国で約束される仕事と警護
正体を隠す
脱北者の中には、自分と北朝鮮に残してきた家族の安全のため、そして、北朝鮮出身者であることを分かりにくくするために、改名する者もいる。
多くの脱北者は公の場で目立たないようにしているが、金氏のような一部の人々は、北朝鮮専門家としてメディアに登場し、有名になっている。
テ氏はロンドンの在英北朝鮮大使館の公使として比較的目立つ立場にいたが、韓国では知られないように生活しようとするだろう、とチェ氏は予想する。
「彼は、ここに一緒に連れてきた家族の安全を考えないといけないので、公人としての生活は送ろうとはしないだろう。静かに暮らせば、周囲の人々を傷つけにくい。彼が公的な活動をするとは思えない」とチェ氏は話す。
チェ氏は、安全上の懸念から、過去2年間にわたって、武装警察官4人に24時間体制で警護を受けていたと話した。同氏は現在も、以前ほど厳重ではないが警察の保護を受けている。
金氏も、かつては武装したボディーガード1人に24時間体制で警護されていたと話した。
長くてつらい脱北の旅
一般的な脱北者の大半は、陸路で中国国境を越境して第3国に渡る長期間の、そして、つらいことの多い旅を経て、最終的に韓国に空路で到着する。
彼らは到着すると、居心地の良い部屋に1人っきりで最大180日間滞在することになる。そして、スパイや偽者でないことを確認するための審査を受ける。
その後、彼らは再定住施設に移され、12週間にわたって韓国での生活に慣れるための支援を受ける。その間、施設外に出ることは許されない。
韓国の議会予算事務局のデータによると、彼らの多くが最終的には飲食店をはじめとする低賃金の職業に就く。彼らの収入は、韓国国民の平均賃金の67%程度だという。
脱北者は再定住プログラムを終えると、家と仕事を見つけるための支援金として1人当たり2000万ウォン(約180万円)を受け取る。彼らの中には、この支援金の一部を、脱北を手助けしたブローカーへの支払いに使う者もいる。