最新記事

インタビュー

GE流インダストリアル・インターネットで、デザインが重要な理由

2016年8月25日(木)16時38分
WORKSIGHT

明瞭なソリューションへと一緒に到達する

 例えば、できあがった製品を販売する段階では、どんなニーズがあり、そのニーズに最適なソリューションは何かということは、おおむね明快になっているはずだ。しかしコ・クリエイションは違う。どんなチャレンジをすべきか、そしてその解決策は何かを顧客と一緒に定義していくのだ。

「コ・クリエイションは新しいアプローチであり、協働の初期段階からステークホルダーが明々白々にソリューションを理解していなくても構わないのです。明瞭なソリューションへと一緒に到達するんです」とラウ氏は強調する。

「まだはっきりしていない状況でステークホルダーと話をする、それでいいんです。何が可能で何が不可能かを言う必要はない。それはみんなで明らかにしていけばいいのです」。これは日本ではまだ知られていない方法だ。アメリカやヨーロッパでは先鞭が着けられているものの、やはり目新しい手法である。

 社外に対してだけでなく、社内のステークホルダーとのコ・クリエイションも重要だ。ラウ氏は顧客とのセッションと同じように、社内の他のチームとコ・クリエイションのセッションを行っているという。例えば、ラウ氏はマーケティングとセールスを担当する部門にいるが、新たなコ・クリエイションに引き込むために営業チームとともに顧客を訪問するという。そうすることで顧客はデザインの重要性、不明瞭な状況に取り組む新しいアプローチの重要性を理解することになる。社外と社内、どちらかだけでなく、双方向で取り組まなければ、価値あるコ・クリエイションを実現する関係は構築できないのだ。

WEB限定コンテンツ
(2016年1月23日に横浜で開催された「Service Design Japan Conference 2016」の内容およびメールでの質疑応答を元に構成)

text: Yoshie Kaneko
photo: Kei Katagiri

※インタビュー後編:世界的にまだ新しい手法「コ・クリエイション」の5つの原則

wsRau_site.jpgゼネラル・エレクトリックは世界最大の機械、重工業メーカー。航空、医療、鉄道、エネルギー、家電など幅広い分野で事業を展開。設立は1892年。本社はアメリカ・コネチカット州。
http://www.ge.com/

* 2014年3月にはGE、AT&T、シスコシステムズ、IBM、インテルの5社がインダストリアル・インターネット・コンソーシアムを設立、2016年1月現在、参加企業は世界220社以上に上る。インダストリアル・インターネットは、ドイツが提唱する「インダストリー4.0」、中国が進める「互聯網+(インターネットプラス)」「中国製造2025」と並び、産業のスマート化を目指す世界規模の大きな潮流になっている。

** マサチューセッツ工科大学スローンマネジメントスクールの情報媒体「MIT Sloan Management Review」にはGEのインダストリアル・インターネットの取り組み事例が紹介されている。(サイトは英文)

wsRau_portrait.jpgカトリーヌ・ラウ(Katrine Rau)
GE シニアUXリサーチャー。ヘルスケアやリテール、通信など、さまざまな分野のコンサルティング業務を経て現職。事業目標を特定し、サービスのイノベーションを通じてユーザー課題の解決へ向けた支援を手掛ける。GEでの業務を通じて世界最大のエネルギー事業に貢献。

※当記事はWORKSIGHTの提供記事です
wslogo200.jpg


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアとウクライナ、和平に向け直接交渉開始 3年ぶ

ワールド

韓国産業通商相、米通商代表に関税免除を要請 代表団

ワールド

EU、新たな対ロシア制裁を準備 欧州委員長が表明

ワールド

トランプ氏が米ロ首脳会談に意欲、ロシア「不可欠だが
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 3
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映った「殺気」
  • 4
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 5
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 6
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 7
    トランプ「薬価引き下げ」大統領令でも、なぜか製薬…
  • 8
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 9
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中