最新記事

インタビュー

GE流インダストリアル・インターネットで、デザインが重要な理由

2016年8月25日(木)16時38分
WORKSIGHT

wsRau_1-pic1.jpg

「Service Design Japan Conference 2016」(Service Design Network日本支部主催)が、2016年1月に横浜で開催された。ラウ氏はここでプレゼンテーションを行った。本稿はその内容をベースにしている。

インダストリアル・インターネットを実現するコ・クリエイションの手法

 GEでは、ラウ氏らデザイナーとデータ分析チームは密に連携しているという。データを深く掘り下げて、ユーザーにいかにスマートに有益な情報を提供することができるか、その方法を検討する必要があるからだ。したがって、現場に出向いて実際に仕事をしているユーザーへのリサーチは必要不可欠だ。

 例えば油田の掘削現場にユーザーがいるなら、心肺蘇生訓練や墜落時の脱出訓練を含めたヘリコプターの搭乗訓練を受けてまでも、はるばるその掘削現場まで足を運んでリサーチを行わなければならない。ユーザー理解は極めて重要であり、手間も時間もコストもかける必要がある。

「実際にユーザーにアクセスし、何が起きているかを理解しなければ、真に有用なUX(ユーザー体験)のデザインも、そしてインダストリアル・インターネットも実現しません」

 これはデザイナーにとっては改めて言うまでもない事実だろう。しかし、社内のメンバー、特にデザインについて専門外の人々には理解しにくいことかもしれない。

 人間は本能的に未知の世界に触れることを恐れる。テクノロジーが進化し、ビジネスを取り巻く環境も変化の激しい時代だが、この状況でインダストリアル・インターネットやUXデザインという未知のものをどうやって受け入れるか。1つの答えにコ・クリエイション(共創)がある。GEで利用している手法の1つだ。

wsRau_1-pic2.jpg

ソリューションが不明確で合意形成が必要なとき、コ・クリエイションは力を発揮する


 GEではコ・クリエイションについて、多様なステークホルダーが一緒になって画期的な問題解決法を生み出すプロセスと定義している。キーワードは「多様なステークホルダー」だ。

 会社や部門を超えて、顧客も含めた多くのステークホルダーが一緒に仕事をすることが重要だとラウ氏は言う。

「インダストリアル・インターネットのデザインをするのはデザイナーやデータの専門家だけではありません。いろいろな機能、職能をミックスしていく、そしてそこにリーダーシップをもたらすことが重要です」

 エンドユーザーのためのデザインを実現するには、経営トップとエンドユーザーも含めて対話する必要がある。ステークホルダーが一堂に会することで、初めて有意義なワークショップが可能となる。

 コ・クリエイションが効果を発揮するのは、以下のマトリクスの右上の部分だ。

wsRau_1-zu2c.gif

ソリューションが明確に定義されておらず、なおかつステークホルダーの方向性が明確に一致していない場合に、コ・クリエイションは効果を発揮する。(ラウ氏提供の図版を元に作成)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、トランプ氏と28日会談 領土など和

ワールド

ナジブ・マレーシア元首相、1MDB汚職事件で全25

ワールド

ロシア高官、和平案巡り米側と接触 協議継続へ=大統

ワールド

前大統領に懲役10年求刑、非常戒厳後の捜査妨害など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    赤ちゃんの「足の動き」に違和感を覚えた母親、動画…
  • 8
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中