GE流インダストリアル・インターネットで、デザインが重要な理由
1パーセントのインパクトで産業全体の無駄を削減
ソフトウェアが人間に与える影響は大きく、そこにこそデザインの重要性があるといえる。
「これまで産業用部門ではあまり人間という要素が重視されてきませんでした。それは注目すべき点です。この産業という文脈の中で我々GEがリーダーシップを発揮できるのは人に着目しているからです」とラウ氏は述べる。
デザインの際は常に人間を中心に考え、人間を産業のプロセスの中に取り込んでいるという。GEでは顧客に対して、エンドユーザーをどう巻き込んでいくかについてコンサルティングを行っているが、それはこういう背景があるからだという。
もう1つ注目すべきポイントとして、インテリジェントな産業機械をつなげていくことで多くの無駄をなくすことが挙げられる。
GEは航空、医療、輸送、石油、ガス、電力といった事業を行っているが、同社の試算では、例えば航空機の燃費を1パーセント改善すると15年間で300億ドル、石油・ガスで設備投資を1パーセント減らすと15年間で900億ドルもの費用が節減できるという。**
医療や鉄道、エネルギー分野でも1パーセントがもたらす影響は極めて甚大だ。インダストリアル・インターネットによって省エネが実現すれば、産業全体において非常に大きなインパクトをもたらすことができるだろう。
産業界の因習を変えていくために
大きなメリットのあるインダストリアル・インターネットだが、実用化は簡単ではないとラウ氏は言う。
理由の1つは産業界の歴史の長さだ。特に大規模な製造業は昔からある機械が多く、古いインフラがまだ現役で動いていることが少なくない。そうしたものをオンライン化していかねばならない。また多くの人にとっても、古いしきたりから抜け出すことには大きな努力が伴う。ユーザーである顧客に考え方を変えてもらうことが重要なのだ。
【参考記事】産業用IoT市場を制覇するのは中国? そのポテンシャルと落とし穴とは
とはいえ、今この瞬間にも爆発的に、しかも膨大な量のデータが発生している。世界に現在存在するデータの90パーセントは過去2年間に生み出されたものとラウ氏は指摘する。全世界で日々、家電やウェアラブル機器、SNSなどがデータを生み出している。このとてつもなく膨大なデータをどう活用するか、賢く考えなければならない。
エネルギー産業を例に挙げれば、200万マイル(320万キロメートル)ものパイプラインが世界中に敷設されている。そのうちの半分は1970年以前に敷設されたものだ。インダストリアル・インターネットを使えば、設備の状態やメンテナンスのタイミングも把握できるので、古いインフラからの流出事故を防ぐこともできるだろう。
機械が発し、ソフトウェアが分析するデータを人類は賢く使っていく必要がある。データは他の人が担当するものだと考えるのではなく、自らの仕事の一部に位置付けなければならない。
ちなみに、パイプライン3万マイルごとに17テラバイトのデータが生み出されるが、これは世界最大の図書館であるアメリカ議会図書館に収蔵された書物の総量より多い。データが増えればセキュリティの面でも、アクセシビリティの面でも課題が増えるが、ユーザーにとってパフォーマンスは重要な要素なので、デザイナーとしてデータの問題にも取り組んでいかねばならないとラウ氏は説く。