中国漁船300隻が尖閣来襲、「異例」の事態の「意外」な背景
9日にはついに岸田文雄外相自らが程永華・駐日本中国大使に抗議する事態にいたった。早くもレベルはマックスに到達してしまったわけだ。
尖閣だけではなかった"異例"尽くしの中国外交
尖閣諸島における中国の異常な動きはいったい何を意味しているのだろうか? ついに中国が尖閣諸島の実効支配を奪おうと実力行使に出てきたのか。フィリピンが提訴した国際仲裁裁判所での敗訴を受け、黒幕である日本に報復しているのではないか。はたまた、タカ派として知られる稲田朋美議員の防衛相就任に対する嫌がらせではないか――などなど専門家の間でもさまざまな意見が飛び交っている。
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尖閣諸島だけを見ていては理解できないというのが私の立場だ。中国を取り巻く環境を見ていると、対日外交以外にも異例の行動を次々と繰り出している。
まずは韓国に対する「韓流禁止令」だ。7月13日、韓国政府は在韓米軍のTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備を認める方針を公表した。THAADに付随する高性能レーダーが人民解放軍を丸裸にしかねないと中国は撤回を求めてきたが、8月に入って韓流スターのイベント中止といった具体策的な報復策に出ている。韓国に行く中国旅行ツアーの中止が始まったとの情報もある。こうした報復そのものは中国ではよくあることだが、配備発表から半月以上が過ぎてから行動開始は不可解きわまりない。
そして南シナ海。8月6日、中国人民解放軍空軍広報官は南シナ海での「戦闘巡行」が始まったことを宣言した。今後は戦闘機や爆撃機、偵察機、空中給油機からなる編隊が定期的に南シナ海をパトロールするという。尖閣諸島近海でも船舶と航空機による定期的な巡行(パトロール)を実施している中国だが、わざわざ「戦闘」という挑発的な言葉をつけ、爆撃機まで飛ばすというのは"異例"としか言いようがない。
そう、8月に入って尖閣諸島、韓国、南シナ海という3つのスポットにおいて、中国は"異例"の強硬姿勢を見せているのだ。
原因は政治の季節、大国になりきれない中国
中国外交は本来、きわめて柔軟だ。7月24日から26日にかけて開催されたASEAN関連外相会議ではその真価を発揮し、経済援助をちらつかせたかと思えば、一方的な行動を取り締まる南シナ海行動準規範の早期制定に言及するなど精力的な外交を展開。ASEAN外相会議の共同声明から中国批判の文言を削除するという成果を手に入れている。
うまく批判を回避したというのに、そこで「戦闘巡行」などと言い始めれば、せっかくの成果はおじゃん。国際社会の批判は必然だ。これまでの外交努力を無駄にするような強硬姿勢は、外交よりも優先される論理があることを意味している。