最新記事

ニュースデータ

投票率が低い若者の意見は、日本の政治に反映されない

2016年7月5日(火)16時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

 そして投票率は、経済力とも関連している。これは日本のデータだが、働き盛りの30~40代を見ると、世帯の年収が高い人ほど投票の頻度が高くなる傾向にある<図2>。

maita160705-chart02.jpg

 政治への関心に階層格差が反映されていることがわかる。この傾向があまり強くなると「支配階層のための政治」になり、既存の体制が維持されやすくなる。

 貧困に象徴されるように、厳しい生活環境に置かれている人ほど社会問題に対して強い関心を持っているはずだ。それは政治への関心に昇華されて初めて、社会変革へと結びつく。社会変革の合法的な手法は政治参画(投票)であって、暴動やテロであってはならない。

【参考記事】未婚男性の「不幸」感が突出して高い日本社会

 ちなみに政治への関心の階層格差は、子どもの世代にも見られる。「政治や選挙に関心がある」という小学生の割合は、富裕層ほど高い傾向にある(国立青少年教育振興機構『青少年の体験活動等に関する実態調査』2014年)。

<図2>は30~40代のデータだが、親世代の政治への関心の階層差は子ども世代にも影響すると言えるだろう。家庭で政治に関する会話をする頻度も、かなり異なるのではないだろうか。学校の政治教育の目標は、生徒たちの政治への関心を高めることだが、その階層格差を縮めることにも気を配る必要がある。

 日本は全体の投票率が低いことに加えて、投票所に足を運ぶ人の属性も偏っている。高齢層や富裕層への偏りだ。これでは社会の変革はなかなか望めない。参院選の投票日には、新たに有権者となったハイティーンだけでなく、老若男女、多様な国民が投票所へ向かうことを期待したい。

<資料:『第6回・世界価値観調査』(2010~14年)
    国立青少年教育振興機構『子どもの読書活動の実態とその影響・効果に関する調査研究』(2013年)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中