最新記事

法からのぞく日本社会

本当にもう大丈夫? 改正されても謎が残る「風俗営業法」

2016年7月5日(火)16時19分
長嶺超輝(ライター)

風営法のあいまいキーワード1「遊興」

 とはいえ、これで「めでたし、めでたし」とはいかず、新たな問題が浮上している。今回の改正で新たに設けられた「特定遊興飲食店営業」の「遊興」の定義があいまいだと言われているからだ。そのあいまいさは、「ダンス」の定義のあいまいさを確実に上回る。

 警察庁は、店側の積極的な働きかけで「客が遊び興じる」ことを、営利的・継続的に実施する飲食店営業を指すものとしている。バンドの生演奏やダンスショー、演芸などを客に披露する「鑑賞型の遊興」と、ダンスやカラオケ、ゲーム、スポーツ応援などができる場を客に提供する「参加型の遊興」の2カテゴリーに分類している。

 では、スポーツバーはどうなるのか。警察庁は、パブリックコメントにおいて「スポーツ等の映像を不特定の客に見せる深夜酒類提供飲食店営業のバー等において、平素は客に遊興をさせていないものの、特に人々の関心の高い試合等が行われるときに、反復継続の意思を持たずに短時間に限って深夜に客に遊興をさせたような場合」「1晩だけに限って行われる単発の催し」「繰り返し開催される催しであっても、6カ月以上に1回の割合で、1回につき1晩のみ開催される催し」は、「遊興」にあたらずOKだという基準を発表している。

 たとえば、サッカー・ワールドカップや野球のワールド・ベースボール・クラシックなどの日本代表戦が行われる日だけ、店側が観戦イベントとして演出し、試合を上映して応援させることはOKだが、オリンピックや世界選手権の試合などを日々継続的に上映して応援させることはNGなのか。NGだとしたら、いったいどこに問題があるのか。

 音楽ライブハウスや野外フェスなどで、飲食を提供する深夜営業を行う場合は、「特定遊興飲食店営業」の許可を取らなければならない。たとえ近隣に住宅地などがなく、騒音問題が発生しないとしても、「善良の風俗と正常な風俗環境の保持」を保てないからだ。

風営法のあいまいキーワード2「接待」

「風俗営業」の定義で、「遊興」の意味も不明確だが、もともと、「接待」の意味もボンヤリしていると、かねてより指摘されてきた。2条3項で「この法律において『接待』とは、歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすことをいう」と定義されているが、いったい「歓楽的雰囲気を醸し出す方法」とは何なのか。

 客の横に座って、お酌をしたり、身体を密着させるキャバクラやホストクラブのような業態が「接待」付きの「風俗営業」であるのは理解できる。では、スナックやガールズバーはどうなのだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中