NATOはロシアを甘く見るな──ラスムセン元NATO事務総長
NATO首脳国は、ロシアが昨年2月のウクライナ停戦合意を完全に履行するまでは経済制裁を続けることを再確認しなければならない。抜け駆けは許されない。イギリスのEU離脱は西側にとって衝撃だったが、その悪影響を最小限に抑えるためにも、イギリスは対GDP比2%の軍事支出を維持するとともに、ロシアに対する経済制裁を続けるべきだ。
NATO戦力のより大きい部分を、東欧の同盟国にシフトする必要もある。バルト3国、ポーランド、ルーマニア、ブルガリアなどに陸海空軍を配備する。ロシアが威圧的な態度をとり続ける限り、駐留は終わらない。集団的なミサイル防衛システムを開発し、サイバー戦闘力を強化する必要もある。受け身の防衛から積極的な防衛、必要とあらば攻撃に出られるようにしなければならない。
将来は対等の防衛力を
ヨーロッパの同盟国はGDPの2%を軍事支出に回す約束を、2024年頃まで守る必要がある。そうすればアメリカの次期政権の心証もよくなるだろうし、次期大統領の任期が切れる頃までには米欧間の防衛力の差も縮小するだろう。
もちろんアメリカも応分の負担を続ける必要がある。NATOは世界で最も繁栄した国々の平和を守り、同盟国間のネットワークを維持し、世界中でアメリカを政治的軍事的に支援している。軍事支出に十分値する恩恵をもたらしているのだ。
NATOサミットは、友好国や近隣諸国に乱暴者が手を出せば西側は座視しない、というメッセージを発するよい機会だ。だが決断力や団結力に欠けるところを見せればロシアは調子に乗って、自らの「勢力圏を守る」を口実に近隣諸国に手を出すだろう。
ロシアの態度に変化が表れるまでには時間がかかる。だがNATOサミットが成功すれば、我々は「統一されて自由なヨーロッパ」にまた一歩、近づくことになる。
*筆者は現在、ラスムセン・グローバル会長