最新記事

ロシア

ポケモンGOは「スパイ目的」と、モスクワ市が代わりのゲームを提供

2016年7月26日(火)16時00分
シボーン・オグレイディ

見習い兵士たちとセルフィーを撮るプーチン大統領 Natalia Kolesnikova-REUTERS

 世界中で一大ブームの「ポケモンGO」。カゴビンやピカチュウ、プリンなどのポケモン・キャラクターを現実世界で捕まえてバトルを楽しむなんて、いかにも面白そうだ。

 ロシアの政府関係者に言わせれば、街を歩きながら隠れているポケモンを捕獲するなど、まるで悪魔の所業。その上、ロシアではゲームのダウンロードがうまくいかず、ロシア国内でポケモンGOを利用したいユーザーは、海外のアカウントを取得してダウンロードするしかない。

【参考記事】クレムリンにもポケモン現る

 だが心配は無用。モスクワ市民は8月末までに、ポケモンGOをまねたモスクワ市政府監修のゲーム「ディスカバー・モスクワ」で遊べるようになる。

説教くさいモスクワ版

 ただしそのゲームで捕獲できるのは、ポケモンではなく、ロシア初代皇帝のイワン雷帝、ピョートル大帝、世界初の有人宇宙飛行を成功させたユーリイ・ガガーリン、フランス皇帝ナポレオン・ボナパルトなど、実在した歴史上の人物ばかり。ゲームの目的は、キャラクター同士を戦わせることではなく、彼らと「セルフィー(自撮り写真)」を撮ること。見つけると―画面上に人物の姿と解説が写し出され、撮った写真はソーシャルメディアに投稿することもできる。

「このアプリの目的は、今流行りのスマホを介した位置情報ゲームを通じて、モスクワの豊かな文化に対する注目を集め、モスクワ市民にもっと街歩きを楽しんでもらうことだ」とモスクワ市は公式ホームページで説明した。

【参考記事】「ポケモンGO現象」がさらに拡大:鬱が改善との声多数。検索数でポルノ超えも

 確かに、現実世界を舞台にしたゲームは流行している。だが、ポケモンGOが熱狂的支持を集めているのは「歩き回れる」からではない。むしろ、ロシア政府が何としても禁止したいと考えている歩きながら「ポケモンを捕まえる」という目的そのものが、人々に受けているのだ。

【参考記事】中東各国のポケモンGO騒動あれこれ

 とはいえ、ポケモンGOに反対する立場からすれば、少しでも市民を本家のゲームから遠ざけることができれば「勝ち」だ。ロシア政府からは、ポケモンGOが人々の動きを追跡し、世界中の様々な場所に関する情報を収集できることを懸念する声も上がっている。「ポケモンGOは国外の情報機関によって作られた疑いがある」とニコライ・ニキフォロフ情報通信相は述べた。

 その懸念に輪をかけたように、フランツ・クリンツェビッチ上院議員は、「ポケモンGOを通じて悪魔が舞い降り、ロシア国民の道徳を内側から崩壊させようとしているように感じる」と述べた。

From Foreign Policy Magazine


【特集】「Pokemon GO」が変えたリアルの世界はこちら

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中