なぜ北朝鮮は意地になってミサイル発射を繰り返すのか
しかしそもそも、米韓がこのような動きに出るのは、「このままでは正恩氏の『核の暴走』は止まらない」との懸念からだ。核ミサイルを大量に実戦配備した独裁者と、核ミサイルをまだ持っていない独裁者とでは、後者の方が除去しやすいに決まっている。軍部などから「やるなら今のうちだ」との意見が出てくるのは当然のことだ。
正恩氏はそんな空気を感じ、ナーバスになっているのではないか。そして、一刻も早く核ミサイルを実戦配備することこそが、自分の身の安全を守ることにつながると考えているのではないか。
そしてその判断は、米韓に対し先制攻撃を選択する動機をさらに強く与える。目下、そのような戦略が具体化しているとは思えないが、近い将来にどのような変化が起きるか、何とも言えない状況になってきた。
[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ――中朝国境滞在記』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)がある。