北に翻弄される韓国の情報機関
Damir Sagolj-REUTERS
<相手がいかに秘密主義の北朝鮮でも、処刑されたはずの高官が生き返り、金正日総書記の死の詳細もつかめない。韓国の国家情報院(NIS)を見る目は厳しい> 写真は朝鮮人民軍
北朝鮮で処刑されたはずの軍高官が表舞台に登場し、韓国の情報機関はまたしてもメンツをつぶされた。
5月中旬に36年ぶりに開催された朝鮮労働党大会に際し、朝鮮中央通信が朝鮮人民軍の前総参謀長、李永吉(リ・ヨンギル)の姿を伝えた。党機関紙の労働新聞によると、李は政治局の要職に選任されている。
朝鮮中央通信の報道を受けて、韓国の統一省は李が生存していると判断した。
韓国メディアは今年2月、李が権力乱用や汚職などの罪で処刑されたと伝えていた。詳しい情報源は伏せられていたが、韓国の京郷新聞は今回、「関連機関」からの情報をもとに統一省が見立てた筋書きだったことを明らかにした。
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「関連機関」は国家情報院(NIS)を指すと考えるのが常識だが、NISは李に関する情報を提供したことを否定している。韓国メディアが自分たちの報道に情報当局が関与していることを明かしたくないという事情にも助けられ、NISは知らぬ存ぜぬを通している。
元院長には有罪判決
もっとも、近年のNISは諜報活動の失敗が続き、信頼性は既に揺らいでいる。さらに、朴槿恵(パク・クネ)政権が誕生した12年の大統領選に介入したとして当時の院長が有罪判決を受けるなど、政治スキャンダルでも評判を落としている。
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一方で、北朝鮮で処刑されたはずの要人が「生き返る」のは、今回が初めてではない。最高指導者の金正恩(キム・ジョンウン)は権力基盤を固めるために粛清を繰り返しているとみられるが、厳しい報道規制もあり、詳しい情報が漏れてこないことも確かだ。
昨年11月、要人の国家葬儀委員に韓光相(ハン・グァンサン)の名前があることが分かった。朝鮮中央通信が金正恩の視察を伝えた際も、同行者として紹介された。朝鮮労働党部長を務める韓は3月から消息が途絶え、NISは5月に、韓が粛清されたと国会に報告していた。NISが同じ5月に粛清されたと報告した国防委員会の幹部も、10月に北朝鮮メディアで健在な姿が報じられた。
今年1月に北朝鮮が実施した4回目の核実験に関する事前の情報や、11年に金正日(キム・ジョンイル)総書記が死去した際の詳細な情報も、NISは入手できなかったとみられている。