最新記事

南シナ海

アメリカ=ベトナムが関係改善、南シナ海狙う中国の「頭痛の種」に

2016年5月31日(火)10時36分

5月27日、米国とベトナムの関係強化は、南シナ海をめぐる中国の戦略見通しを一気に複雑化してしまった。写真は握手するオバマ米大統領(左)と、ベトナムのチャン・ダイ・クアン国家主席。ハノイで23日撮影(2016年 ロイター/Carlos Barria)

 米国とベトナムの関係強化は、南シナ海をめぐる中国の戦略見通しを一気に複雑化してしまった。

 オバマ米大統領は、ベトナムへの武器禁輸措置を全面解除するという歴史的な政策転換により、任期最後のアジア歴訪における同国訪問を飾ったが、それは直接中国に向けられたものではないと繰り返し強調した。

 しかし、かつて敵国だったベトナムと米国が完全に関係を正常化したことは、中国にとって短期的にも長期的にも戦略的な頭痛の種になるだろうと、同地域の軍事筋や安全保障専門家は指摘する。

 専門家によれば、運用面において中国は短期的に、ベトナムが中国軍への監視を強化するために米国からレーダーやセンサー、偵察機やドローンを手に入れる可能性に直面することになる。

 長期的には、オバマ政権のアジア重視戦略において、ベトナムが主要な役割を担うことを意味する。米軍事産業は、ベトナムへの高額な兵器販売をロシアと張り合うことになる。また、南シナ海でベストな自然港であるカムラン湾を使用するという米海軍が長年抱いてきた願いがかなう可能性があると、軍事筋はみている。

 外交筋によれば、たとえベトナムが軍事同盟に向けた正式ないかなる措置を避けたとしても、中国の領有権主張をめぐり、政治的な協力や情報共有の拡大がなされる可能性があるという。

 このような動きは、ベトナムの軍事戦略家の目的と一致するものだ。彼らは急速に近代化する中国軍が再度べトナムを攻撃することに対する代償を高めたいとロイターに語っていた。

 1980年代に中国との国境で起きた紛争や88年の南沙(英語名スプラトリー)諸島における海戦よりも、今後に起きる中国との戦いははるかに困難なものとなることをベトナムは理解している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インド野党、アダニ問題追及姿勢強める 議会は機能不

ビジネス

独VW、中国新疆工場売却で合意 上海汽車との提携延

ワールド

焦点:ヨルダン川西岸で拡大するイスラエル入植地、「

ワールド

原油は5ドル過小評価、対イラン制裁で供給減のリスク
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式トレーニング「ラッキング」とは何か?
  • 4
    放置竹林から建材へ──竹が拓く新しい建築の可能性...…
  • 5
    「健康食材」サーモンがさほど健康的ではない可能性.…
  • 6
    こんなアナーキーな都市は中国にしかないと断言でき…
  • 7
    早送りしても手がピクリとも動かない!? ── 新型ミサ…
  • 8
    トランプ関税より怖い中国の過剰生産問題
  • 9
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 10
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 8
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中