熊本地震のショック全国に響くトヨタ、生産への影響は9万台にも
トヨタはグループ会社の愛知製鋼の事故で生産が遅れたため、4月から休日出勤や残業による生産の挽回に入り、8―9月をめどに取り戻す予定だった。両氏とも2017年3月期末までにトヨタが生産を挽回するとみて通期での影響は軽微とみるが、愛知製鋼の事故対応による増産も重なり、杉本氏は「10―12月期も頑張って生産しないと取り戻せないのでは」との見方を示している。
日産は九州工場の操業継続
同じくアイシンや熊本県内の取引先から部品を調達していた日産自動車<7201.T>。16日は設備の安全や部品供給体制を確認するため九州工場(福岡県苅田町)の稼働を見合わせたが、18日からは稼働率を落としながらも操業を続けている。なぜ日産は工場を止めずに済むのか。
日産も九州での生産では九州産部品を多く使っているが、加えて、本州より距離が近い韓国や中国から調達した部品も積極的に使用している。海外調達では飛行機や船での輸送リスクなどを考慮し、在庫を多めに持つ。杉本氏は、トヨタのほうが日産より九州からの部品調達が多く、かつ在庫も少ないため、生産休止が広がったとみている。
在庫は最小限にして生産効率を追求するトヨタのいわゆる『ジャスト・イン・タイム』。この思想は平常時にはうまく機能するが、11年の東日本大震災のような災害時には「アキレス腱」にもなると指摘するアナリストもいる。だが、ダイハツ幹部は「今後も『ジャスト・イン・タイム』の哲学は維持し続ける」と強調する。
影響長引く恐れも
アイシンの影響は広がる恐れもある。同社からエンジン部品を調達していた三菱自動車<7211.T>は水島製作所(岡山県倉敷市)での軽自動車生産を18日から20日まで休止。その先はつど検討するといい、綱渡り状態だ。同じくアイシン部品を採用するマツダ<7261.T>の国内工場は今のところ22日まで稼働する見込みだが、来週以降は部品供給に支障が生じないか確認中という。
熊本県内の車載用半導体工場の状況も不透明なため、不安の声が上がる。三菱電機<6503.T>の工場(合志市)では家電やハイブリッド車のモーター駆動に用いるパワー半導体モジュール製品を生産するが、設備被害の確認作業が続いている。同社はこの製品で世界首位クラスのシェアを誇る。ルネサスエレクトロニクス<6723.T>の川尻工場(熊本市)は東日本大震災で被災した那珂工場(茨城県ひたちなか市)に比べて「被害は限定的」(広報)のようだが、詳細はまだ不明。21日をめどに生産再開日を公表する。
(白木真紀、田実直美、山崎牧子 編集:北松克朗)