テロ続発が脅かすトルコ経済
実際、11年に中東の複数の国で騒乱が起こると、トルコも打撃を受けた。ヨーロッパと中国の景気見通し悪化を含む世界経済の動向も逆風となった。
「00年代の景気拡大と政治力の向上を経験したエルドアンは、地域のリーダーになれるという幻想を抱いた」と、イェルダンは指摘する。「だが、中東で認められようと各国の政治的混乱に関与したことで、自国に破滅的な悪影響を及ぼした」
「バブル」の崩壊は近い?
経済不振に陥った後も、トルコは野心的なインフラ整備計画を続けている。例えば、イスタンブールに90億ドル近くを掛けて世界最大規模の国際空港を建設するプロジェクト。高速鉄道網の拡張計画や、ボスポラス海峡に3本目の橋を架けるプランもある。
米商工会議所(USCC)のクーシュ・チョクシー上級副会頭(中東・トルコ担当)は、これらの巨大プロジェクトはトルコの大きな潜在的可能性の反映だと考えている。チョクシーは、外国人投資家は近いうちにトルコから撤退するか、既に撤退を始めているという臆測に反論。アメリカ企業はトルコの全体的な経済見通しを楽観視していると主張する。
「トルコの経済とビジネス環境の回復力の強さは証明済みだ。長期の投資家は残るだろう。アメリカの企業はトルコの経済成長を心強く思っており、中期・短期・長期的な経済的安定を確信している。われわれの調べでは、アメリカ企業は現在、トルコに対して数年前よりも高い関心を寄せている」
だが、エルドアン政権のトレードマークとなっている巨大プロジェクトの数々については、異なる意見もある。複数のエコノミストや政治アナリストは、これらのプロジェクトはトルコ政府が一般国民の不安をきちんと把握できていないことの証明だと指摘する。
中央アジア研究機関であるシルクロード研究プログラムの専門家ガレス・ジェンキンスによれば、一部のプロジェクトは外国からの投資を得るのに苦労したという。「それなのに事態が悪化するほど、エルドアンはうまくいくはずだという確信を強める。それが最も頭の痛い問題の1つだ」
一部の投資家は大規模な投資を避けているようだが、多くの投資家は当面、トルコにとどまる道を選択していると、ジェンキンスは指摘する。
「投資家たちは、今のところ踏みとどまっている。しかし、何らかのきっかけで、彼らは大きな損害を被るだろう。バブルがはじけるようなものだ。今のように爆弾テロ事件が続けば、いずれ立ちゆかなくなる」
[2016年4月 5日号掲載]