監禁生活を送る母子の人生を取り戻す闘い
2016年4月8日(金)16時25分
閉ざされた世界を照らす輝きは、ジョイを演じるラーソンから発せられているのだろう。ラーソンはまだ26歳だが、若さの割にさまざまな感情や経験の積み重ねを感じさせる。
もがき苦しむ姿はないが
ラーソンはわが子の健康や安全、幸せを守ろうとするジョイの奮闘を見せてくれる。同時に、絶望に沈み込みそうになる心に必死に抗い、前を見詰め続けようとする内面奥深くでの闘いも見事に表現している。
何より、いつか息子が経験するであろう外の世界に対する強い思い入れが伝わってくる。それは見る人に感動を与えるだけでなく、綿密に考え抜かれた演技。子を育てる親、そして人間というものに対する洞察に満ちていると言えるだろう。
後半では2人が脱出した後日談が語られる。この映画は暗い状況を扱ってはいるが、試練のなかで母子がもがき苦しむといったセンセーショナルな場面はない。小屋の中で2人が比較的幸せに暮らせた秘訣は、決してもがいたりしないことだった。
作品の根底に流れているのは希望のメッセージだ。たとえ監禁下でも愛し合う2人なら、生き続けるに値する世界をつくり上げることができる。
© 2016, Slate
[2016年4月12日号掲載]
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