ハイテク温水便座から食堂まで、中国の何でもアリな「供給側改革」
シャオミCEOは欧米の輸入品と競合できる製品を作れることと言い、経済学者は欧米ブランドの買収だという魔法の言葉
3月14日、その言葉はある人にとっては中国でどこでも見られるちっぽけな麺物屋の改装を意味し、ある人にとってはハイテク便座(温水洗浄便座)の製造を意味している。写真は全人代での習近平総書記。13日撮影(2016年 ロイター/Kim Kyung-hoon)
その言葉はある人にとっては中国でどこでも見られるちっぽけな麺物屋の改装を意味し、ある人にとってはハイテク便座(温水洗浄便座)の製造を意味している。「供給側改革」は北京で開催中の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)での流行語だが、解釈はさまざまで、正確な意味はあいまいなままだ。
習近平国家主席の昨年終盤の発言で注目されるようになった供給側改革(サプライサイド・リフォーム)という言葉。米国のレーガン元大統領が規制緩和や減税を導入する際に用いた英語のフレーズが由来だ。アナリストらは国有企業の再編などを通じ、国内経済における政府の役割を縮小して市場原理を一段と働かせることを狙ったものだと説明している。
しかし、実のところ具体的な意味は誰もよくわかっておらず、数千人いる全人代の代表がそれぞれ独自の解釈をする中で、省級政府による無駄遣いといったリスクが高まっているほか、中央政府の政策を地方に浸透させることの難しさを浮き彫りにしている。
キャピタル・エコノミクス(シンガポール)のエコノミスト、ジュリアン・エバンス=プリチャード氏は「中国ではこうした問題は常にある。政府機関が多層的に重なる構造のため、地方レベルにメッセージを浸透させ、適切に実行させるのを困難にしている」と述べた。
中国北西部の甘粛省は貧困で知られる。国営新華社によると、同省の当局者は有名な蘭州牛肉麺の店舗を改装し、インターネットに接続することを推し進めている。「ケンタッキーフライドチキン(KFC)といった西洋のファストフードのように」なれば、価格を引き上げることが可能だとしている。
また、全人代代表の会合では多くの当局者が供給側改革の1つとして、中国人の訪日旅行客に人気のハイテク便座を中国の業者が製造できるようになることを挙げた。
海外での買収を後押しする発言も出ている。西南財経大学のヤン・ハイヤン教授(経済学)は1月、重慶で開かれたイベントで「供給側改革とは何か。現在、世界経済は苦境に陥っており、多くの欧州ブランドも苦しんでいる。それらを買収したらどうか」と発言。「中国人がこうしたブランドを買収すれば中国ブランドになる。シャネルやルイ・ヴィトン、アディダス、ナイキを全て買収したらいい」と話した。