女性の敵か味方か「処女奨学金」の波紋
「厳しい条件」は人権を無視した性差別かそれとも若い女性を守る現実的な方法なのか
文化的な慣習? 処女に意味を持たせるのは男性社会ならではの特徴と擁護する向きも(リード・ダンスの参加者) Rogan Ward-REUTERS
経済的な問題を抱える大学生にとって、奨学金は命綱だ。ただし、南アフリカ東部のクワズールー・ナタール州ウトゥケラ区が導入した奨学金には厳しい条件が付いている。
受給資格は、性経験のない女子のみ。処女であることを確認する検査を定期的に受けることを条件に、現在ズールー族の女子学生16人が学んでいる。
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この「処女奨学金」が、大きな議論を巻き起こしている。差別的で違憲だという批判に対し、賛成派は処女検査は文化的な慣習だと主張。若い女性が望まぬ妊娠やHIV感染を避け、勉学に集中しやすくなると主張する。2月初めには賛成派の地元住人が役所まで行進した。
「若い女性ほど弱い立場にある」と、奨学金を考案したウトゥケラの女性地区長ドゥドゥ・マジブコは言う。「彼女たちは援助交際目的の中高年男性と恋に落ち、病気をうつされ、妊娠し、人生を破壊される」
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奨学金を受給する学生は、休暇で帰省した際に「検査」を受ける。草を編んだ敷物に横たわり、年長の女性が処女膜を確認する。処女でなくなった場合、奨学金は打ち切られる。
「父には妻が2人いて、暮らしに余裕がない」と、薬学を学ぶ22歳の奨学生は語る。「処女かどうか、定期的に検査を受けるつもりがあるかと聞かれて、私は『はい』と答えた。自分が処女であることを誇りに思っている。そのことがこんなにたくさんの扉を開いてくれるなんて、思っていなかった」
彼女は検査にも不安はない。「膣を開いて中を見るだけ、何かを入れられるわけではない。検査が間違っていたという話も聞いたことがない」
男女の不平等を固定化
処女検査には、いまだに文化的な慣習という側面もある。ズールー族の王の前で未婚の女性が踊りを披露する伝統儀式「リード・ダンス」でも、参加者は検査を受ける。
一方、この慣習がアパルトヘイト(人種隔離政策)後の憲法が定める女性の権利を侵害しているとの批判もある。人権団体ローヤーズ・フォー・ヒューマン・ライツは、処女奨学金は女子に男子と異なる性的基準を課し、男女の不平等を定着させると指摘する。
「善意だとしても、完全に不適切で差別的なやり方だ。特にこの国は、性暴力の発生率が高く、自ら望んだセックスばかりではない」と、同団体の男女平等プログラムを担当する弁護士のサンジャ・ボーンマンは言う。
南アフリカのバサビレ・ドラミニ社会開発相も、処女検査を擁護することは、控えめに言って「見当違い」だと批判。擁護するほど、男性優位社会に染み付いた有害な慣習が浮き彫りになると語っている。