南シナ海の米中対立がマレーシアに強いる「綱渡り」
軍事で米国、経済では中国と密接な関係を築いてきた国にも変化の兆し?
各国の思惑が交差して── 11月4日、ASEAN拡大国防相会議では、南シナ海の言及をめぐり日米と中国が対立し、共同宣言の採択は見送られたが、その板挟みにあったのがホスト国であるマレーシアだ。写真は南シナ海スプラトリー諸島にある中国の人工島。5月代表撮影(2015年 ロイター)
クアラルンプールで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)拡大国防相会議では、南シナ海の言及をめぐり日米と中国が対立し、共同宣言の採択は見送られたが、その板挟みにあったのがホスト国であるマレーシアだ。
このことは、マレーシアと他の東南アジア諸国が中国と米国の間で、いかに難しい綱渡りを余儀なくされているかを物語っている。特に先週、米海軍の駆逐艦が南シナ海南沙(同スプラトリー)諸島に派遣され、中国が造成した人工島付近を航行してからはなおさらだ。
マレーシア政府の統計によると、中国は同国最大の貿易相手国。フィリピンやベトナムなど同じく南シナ海で領有権を争う他の東南アジア諸国とは対照的に、マレーシアは大抵の場合、中国の軍事的進出に対する懸念は大したことではないように振る舞ってきた。
だが米国防当局者らの話では、マレーシアは他の東南アジア諸国と同様、南シナ海における中国の海洋進出に対抗するため、米国の軍事的プレゼンス拡大を求めているという。
「地域全体で求められているのが分かる。マレーシアがいい例だ」と、米国防総省高官は語った。
カーター米国防長官は5日、米軍の原子力空母を視察するが、それにはマレーシアのヒシャムディン国防相が同行。カーター氏はマレーシア海軍も訪問する。
両国はまた、海兵隊による合同軍事演習も来週に控えている。
「他の分野でも合同軍事演習の招待を受けている。多くの活動が進行中だ」と、前述の米国防総省高官は述べた。
マレーシアは、東南アジアを通過する米軍の艦船や航空機に補給などの支援を行う取り決めを長い間結んでおり、同国の港には米艦が頻繁に寄港している。
米議会調査局(CRS)によると、マレーシアに寄港した米艦船数は2000年代初めにはほんのわずかだったが、2011年には年間30回以上と着実に増加している。
マレーシアのある高官は今週、同国が中国寄りにも米国寄りにも見られてはいけないとし、「バランスを取らなければいけない」と匿名を条件に語った。