最新記事

アフガニスタン

オバマに公約を撤回させたタリバンの勢力拡大

タリバンの支配地域は米軍進攻した01年以来で最大に広がった

2015年10月28日(水)13時25分
アバニーシ・パンデイ

駐留延長 カブールで発生した車爆弾テロの事故現場に到着した米軍兵士(今年5月) Mohammad Ismail-REUTERS

 オバマ米大統領は先週、米軍のアフガニスタン駐留を17年以降も延長すると発表した。反政府勢力タリバンの攻勢などを受けた措置だが、自分の任期中に米軍を完全撤退させる方針を表明していたオバマにとって、事実上の公約撤回となる重い決断だ。01年に始まったアフガニスタン戦争は、米史上2番目に長い戦争になっている。

 国連が先月まとめた非公開の報告書によると、タリバンの支配地域は米軍がアフガニスタンに進攻した01年以降で最大に広がった。全34州のうち27州は、タリバンの脅威が「大きい」または「極めて大きい」地域に分類されていると、ニューヨーク・タイムズ紙は報じている。

北部の要衝クンドゥズも危なかった

 首都カブール周辺の州も「相当程度」の脅威にさらされているようだ。この報告はタリバンが北部の要衝クンドゥズを一時占拠する前にまとめられたものなので、現在の状況はさらに悪化していると思われる。

 タリバンは最高指導者オマルの死後、後継者に指名されたアクタル・ムハマド・マンスールの下で組織の立て直しと軍事力の強化を図り、組織の主体となったパシュトゥン人が多く暮らす南部や東部の多方面で攻勢に。クンドゥズなど北部に点在するパシュトゥン人地区でも同様だ。

 報道によると、アフガニスタンのガニ大統領は「われわれは過去半年間、13州で同時に戦ってきた。戦争は今も続いている」と語った。アフガニスタン駐留米軍のジョン・キャンベル司令官は先週の米議会での証言で、政府軍が各地方の拠点を「ほぼすべて」維持するなか、「アフガニスタン情勢は重大な分岐点を迎えた」と主張した。

 だが国連の報告によれば、南部のヘルマンド州やウルズガン州で政府軍が押さえているのは政府の施設のみ。それ以外は繰り返し武装勢力の攻撃にさらされているという。

[2015年10月27日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

新型ミサイルのウクライナ攻撃、西側への警告とロシア

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 10
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中