最新記事

米大統領選

ヒラリーの独壇場だった民主党討論会

2015年10月15日(木)16時57分
エミリー・カデイ

 移民問題については、「みなさんがこの場で聞くすべての見解と共和党の候補者から聞くことには大きな違いがある」と、クリントンが発言。これを受けてオマリーは、移民排斥論者として知られる共和党の最有力候補ドナルド・トランプを「共和党カーニバルの客引き」と非難した。

 討論が白熱し、和気あいあいムードが吹き飛ぶ場面もあったが、クリントンは落ち着いた態度を貫いた。銃規制、外交、財政改革などの争点をめぐり、おもにサンダース、クリントン、オマリーが舌戦を繰り広げた。サンダースとオマリーがよりリベラルな立場でタッグを組み、クリントンと対立する場面が多かった。しかし銃規制では、サンダースが過去に銃の製造業者の訴追免除を支持したことを弁明する羽目になり、失点を喫した。

 外交政策では、サンダースはクリントンに助け舟を出さず、2002年に当時上院議員だったクリントンがイラク侵攻に賛成票を投じたことを批判。イラク戦争は「この国の歴史上最悪の外交政策の失敗」だったと述べた。

金融規制改革では厳しさをアピール

 クリントンは賛成票を投じたのは誤りだったと既に認めており、この問題で批判されるのを予想して反論を準備をしていた。2008年の大統領選予備選で敗れた相手であり、クリントンがイラク戦争に賛成したことを批判した人物、つまりバラク・オバマ大統領を引き合いに出したのだ。

「(イラク戦争に賛成票を投じたにも関わらず)選挙後、国務長官になってくれないかと言われた」と、クリントンは言い、自分の判断能力をアピールした。「オバマは私の判断力を貴重と考え、(ホワイトハウスの地下にある)シチュエーションルームで何時間も議論をして過ごした」」

 クリントンがより強硬なシリア政策を主張していることをオマリーが批判すると、オマリーは2008年の大統領選では自分を支持したではないかとやり返した。

 金融規制改革に関し、オマリーは、銀行と証券の間に垣根を設けたグラス・スティーガル法を復活させる必要があると論じた。

移民には優しいほうが有利

 クリントンは、ウォール街の監督規制問題については最近、ライバル候補たちの提案よりも「包括的で厳しい」提案を発表したと言った。同提案は、保険会社や投資銀行といったシャドーバンキング(影の銀行)業界にも規制の網をかけるものだという。クリントンに言わせれば、シャドーバンキングは今後の経済の安定性にとって大きな脅威になりうる。

 サンダースは、不法移民を合法化することを柱とした2007年の移民制度改革案に反対票を投じたことで弁明を迫られた。ラテン系移民の票はもはや望めないのではないか、と司会のクーパーからも突っ込みが入った。「法案に反対したのは、労働条件についての条項があまりに酷かったからだ。人権団体の南部貧困法律センターは『奴隷制度に近い』と呼んだほどだ」と、サンダースは語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

国連の食糧・難民支援機関、資金不足で大幅人員削減へ

ワールド

トランプ大統領、イラン最高指導者との会談に前向き

ビジネス

トランプ氏「習主席から電話」、関税で米中協議中と米

ワールド

ウクライナ和平案、米と欧州に溝 領土や「安全の保証
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考…
  • 5
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 6
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 7
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 8
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中