中国が手に負えなくなったゴミの山
06年以来、北京は1000近くの不法投棄場所にメスを入れ、ゴミを移動させたり基準を満たす埋め立て地に作り替えたりしてきた。北京南部のある投棄場所では、数年にわたり蓄積された約360万立方メートルのゴミを掘り起こして処理。3年の月日と5億元の費用を費やした。
衛によれば、まだ70ほどの不法投棄場所が残っており、2017年頃までかかりそうだという。とはいえ、ゴミ処理能力の上限と日々排出されるゴミの量にギャップがある限り、不法投棄場所は出現し続けるだろうと、彼は言う。「昨年のゴミ処理能力は99・3%だった。つまり、今もどこかで違法にゴミが捨てられ、新たな不法投棄場所が誕生しているということだ」
ましてや北京以外の都市では、対策はあまり進んでいない。上海環境衛生工程設計院の張益(チャン・イー)によれば、「私が知る限り、不法投棄場所の実態を調査している地方当局はごくひと握りだ」。彼の試算では中国全土に1万以上の不法投棄場所が存在する。中国人民大学の環境学教授(匿名を希望)は、「地方当局はその数を明確に把握しているが、公にしたがらない」と言う。
衛によれば、北京の調査は各地区の都市管理当局と環境保護当局双方から提供されるデータに基づいて精査される。投棄場所を特定するのに衛星写真や航空写真なども用いられている。客観的で正確な調査が進められているように見えるが、それでも違法ゴミがどれほどの汚染を引き起こすのかについては、一般にはほとんど知られていない。
刻々と進む環境の時限爆弾
違法投棄ゴミが自然分解されるには何十年もかかる。その間、定期的に汚染状態を検査すべきだが、「この手の査察はまったく行われていない」と張は言う。
地方政府が対策に乗り出さないのは、資金不足に加えて改善基準が確立されていないことが主な原因だと、専門家らは指摘する。北京当局は、資金を拠出し、入札を行って浄化事業を担う民間企業を誘致してきた。だがほかの都市は、同様の対策に乗り出せずにいるようだ。
その間にもゴミ処理場に収まり切らない違法投棄ゴミは中国各地を覆い、環境の時限爆弾は刻々と時を刻み続ける。
© 2015, Slate
[2015年9月29日号掲載]