最新記事

環境

中国が手に負えなくなったゴミの山

2015年9月25日(金)12時14分
陳儀方

 06年以来、北京は1000近くの不法投棄場所にメスを入れ、ゴミを移動させたり基準を満たす埋め立て地に作り替えたりしてきた。北京南部のある投棄場所では、数年にわたり蓄積された約360万立方メートルのゴミを掘り起こして処理。3年の月日と5億元の費用を費やした。

 衛によれば、まだ70ほどの不法投棄場所が残っており、2017年頃までかかりそうだという。とはいえ、ゴミ処理能力の上限と日々排出されるゴミの量にギャップがある限り、不法投棄場所は出現し続けるだろうと、彼は言う。「昨年のゴミ処理能力は99・3%だった。つまり、今もどこかで違法にゴミが捨てられ、新たな不法投棄場所が誕生しているということだ」

 ましてや北京以外の都市では、対策はあまり進んでいない。上海環境衛生工程設計院の張益(チャン・イー)によれば、「私が知る限り、不法投棄場所の実態を調査している地方当局はごくひと握りだ」。彼の試算では中国全土に1万以上の不法投棄場所が存在する。中国人民大学の環境学教授(匿名を希望)は、「地方当局はその数を明確に把握しているが、公にしたがらない」と言う。

 衛によれば、北京の調査は各地区の都市管理当局と環境保護当局双方から提供されるデータに基づいて精査される。投棄場所を特定するのに衛星写真や航空写真なども用いられている。客観的で正確な調査が進められているように見えるが、それでも違法ゴミがどれほどの汚染を引き起こすのかについては、一般にはほとんど知られていない。

刻々と進む環境の時限爆弾

 違法投棄ゴミが自然分解されるには何十年もかかる。その間、定期的に汚染状態を検査すべきだが、「この手の査察はまったく行われていない」と張は言う。

 地方政府が対策に乗り出さないのは、資金不足に加えて改善基準が確立されていないことが主な原因だと、専門家らは指摘する。北京当局は、資金を拠出し、入札を行って浄化事業を担う民間企業を誘致してきた。だがほかの都市は、同様の対策に乗り出せずにいるようだ。

 その間にもゴミ処理場に収まり切らない違法投棄ゴミは中国各地を覆い、環境の時限爆弾は刻々と時を刻み続ける。

© 2015, Slate

[2015年9月29日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

9月改定景気動向指数、一致指数は前月比+1.3ポイ

ビジネス

村田製が新中計、27年度売上収益2兆円 AI拡大で

ビジネス

印財閥アダニ、米起訴受け銀行や当局が投融資調査 資

ビジネス

伊銀行2位ウニクレディト、3位BPMに買収提案 約
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 10
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中