難民は「未来の熟練工」、ドイツ高齢化の救世主か?
恩恵か負担か
難民の約5分の1を受け入れるドイツ最大州ノルトライン・ウェストファーレン州にあるドルトムントは4000人程度を引き受けるが、年末までにその数は倍増する見通しだ。
工業都市であるドルトムントは炭鉱業が衰退し、失業率は12%超に上る。これは全国平均の2倍だ。
欧州の指導者らは難民受け入れを拒否する理由として高い失業率を挙げるが、ドルトムントのHWKは異なる見方をしている。同市では企業の4分の1程度に空きがあるとしたうえで、HWKの広報担当者はドイツ人の多くが徒弟制度には興味を持たず、大学への進学を希望すると語った。
そこでHWKは今年、難民85人に言語と数学のテストを実施し、シリアやコンゴ、エリトリア出身の15人を選んで眼鏡技師や電気技師としての訓練を行った。コックさんの会社で働く男性はそのうちの1人だ。
徒弟制度では、時給8.50ユーロ(約1150円)という最低賃金が義務付けられていない。労働組合は、難民が安い労働力として搾取されないよう対策の必要性を訴えている。
難民流入が賃金引下げを招く恐れについて、HWKの広報担当者は、徒弟制度の報酬は団体協約によって固定されていると回答した。
ドルトムントHWKの責任者は、小規模な企業は時に難民にとって家族の代わりとなり、新たな生活を送る助けとなっていると話した。
その一方で、難民流入の「負の側面」も浮上し始めた。デメジエール内相は国家の負担が増加する可能性を指摘。ナーレス労働社会相も手当受給者の数が最大で46万人増加する可能性があるとしている。
ドイツ政府は、手続きの簡素化など難民が労働市場に参入するまでの時間短縮化を実施している。
労働の未来研究所(IZA)の副所長は、単に空きがいっぱいあるからといって、難民で熟練労働者の不足を解決できると考えるのは誤りだと指摘する。「中長期的に見れば、ドイツが抱える人口動態の問題は緩和できる可能性がある。とりわけ、われわれが社会として難民を労働市場にうまく溶け込ませることができるのであれば。ただし言うまでもなく、これはチャレンジであり、約束された成功などない」と話した。
(Tina Bellon記者、Caroline Copley記者、翻訳:伊藤典子、編集:下郡美紀)