難民は「未来の熟練工」、ドイツ高齢化の救世主か?
ヨーロッパを震撼させる難民問題、だが果たして彼らは本当に招かれざる者なのか──
9月10日、欧州諸国の多くが難民・移民の大規模な受け入れは自国経済に損失をもたらし得ると考える一方で、ドイツは記録的な難民流入に頼ることで自国を救おうとしている。写真は独ドルトムントの床張り会社で見習いとして働くエリトリア出身の男性。8月撮影(2015年 ロイター/Ina Fassbender)
[ドルトムント/ベルリン 10日 ロイター] - 欧州諸国の多くが難民・移民の大規模な受け入れは自国経済に損失をもたらし得ると考える一方で、ドイツは記録的な難民流入に頼ることで自国を救おうとしている。
死亡数が出生数を上回るなか、ドイツの労働人口は2030年までに600万人減少する見通しで、持続的な経済成長を危うくしている。
「われわれのところにやって来る人々を早急に訓練し、仕事に就かせることができれば、熟練労働者の不足という、わが国経済の未来にとって最大の課題の1つが解決するだろう」とガブリエル副首相兼経済・エネルギー相は10日、議会で語った。
ドイツは年内に約80万人の移民を受け入れる予定だ。移民で不足を埋めつつ、人口を維持するのはドイツ政府にとって簡単なことではないだろう。だが、多くの企業はすでに彼らに期待のまなざしを向けている。
ドイツ西部の都市ドルトムントで小さな床張り事業を営むダニエル・コックさんは、研修生を探して1年がたったころ、地元の手工業会議所(HWK)から難民を引き受ける気はないかと聞かれた。
その後、コックさんのところには31歳のエリトリア出身の男性が派遣された。男性には床張りの経験は全くなかったが、2週間に及ぶ試用期間を経て、2018年まで見習いとして働くことになったという。
「期待していたわけではなかったが、能力があったし仕事熱心だった」と、コックさんは話す。コックさんは、これまで数え切れないほど満足のいかない研修生を受け入れてきたという。
ドイツ経済研究所(DIW)のマルセル・フラッシャー所長は、同国で過去5年間に新たに創出された雇用約150万人の3分の2以上が移民で占められたとし、「ドイツの経済力を維持したいなら、労働者が必要だ」と指摘した。