最新記事

米中関係

訪米初日、習近平はどう迎えられたか?【習近平 in アメリカ②】

2015年9月25日(金)12時55分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 中国側の軍事関係ウェブサイトは「米国が積極的に偵察を強めてきた」と主張し、「米軍RC135はなぜこんなにまで頻繁に中国の偵察に来るのか:偵察の狙いは二砲核兵器だ」と断罪する。

「二砲」とは何のことかというと、これは中国人民解放軍の中の最も機密性の高い「中国戦略ミサイル部隊」で、アメリカはその能力と核兵器があるか否か、また中国の迎撃能力がどれくらいであるかを試すために頻繁に中国上空に接近するようになった。
米偵察機が沖縄にある嘉手納基地から飛び立ち頻繁に偵察に来るようになったのは今年の5月からで、特に9月3日に中国が軍事パレードを行った後は頻度を増した。

 それは習近平訪米を快く思わない共和党系列の仕業だと、中国政府関係者は釈明した。「ターゲットは中国ではなく、オバマ大統領だ」と彼は断言する。「習近平との蜜月を、いい加減でやめろ、というオバマに対する威嚇でしかない」、「つぎの大統領選で共和党が勝利するためだ」と吐き捨てた。

 さて、どうだろうか...。

人権問題でも逆風――女スパイとして中国で逮捕されているアメリカ人

 9月22日付「ウォールストリート・ジャーナル」6カ月前に訪中し、スパイとして拘留逮捕されているアメリカの女性事業家ファン・ギリスについて報道した。彼女は全くのビジネス目的で訪中したのに、帰国しようとして立ち寄った中国南部の珠海で拘留され、その後逮捕されている。彼女の夫のジェフ・ギリスが9月20日に弁護士に相談し、習近平訪米に合わせてメディア公表したものだ。

 中国当局はこの件に関して何ら説明をしておらず、彼女は全くの冤罪で無実だ、だから一日も早く釈放してほしい、というのが夫ジェフ・ギリス氏の主張である。

 中国内ではこのようなことは日常茶飯事なのに、習近平が22日の歓迎会の講演で「人権問題」に関しても触れ「人権を尊重している」として「法治国家」を強調しているのは笑止千万といえるだろう。

 おまけに習近平は同日、中国国内に対して「国家安全法を強化せよ」という指示をアメリカから出している。「社会の安定のため」というのが、その理由だ。

 習近平にとっては、どうやら前途多難な訪米となりそうだ。

 中国の「新型大国関係」は「一方通行」であり「独りよがり」であったことに、気がつくといいのだが...。

 以上は習近平訪米の第二報である。また追いかけて分析したい。

[執筆者]
遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数

※当記事はYahoo!ニュース個人からの転載です。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中