中国鉄道、南米上陸の皮算用
中国の高速鉄道でブラジルとペルーを結ぶ南米横断鉄道計画に入り交じる期待と不安
固い握手? 横断鉄道計画の調査開始などで合意した李(左)とルセフ(5月19日) UESLEI MARCELINOーREUTERS
中国の高速鉄道が南米大陸を貫くことになりそうだ。先月下旬の中国の李克強(リー・コーチアン)首相の南米歴訪を機に、ブラジルとペルーを結ぶ南米横断鉄道を建設するという巨大プロジェクトが動き始
めた。中国の支援により、大西洋岸のポルトドアス(ブラジル)と太平洋岸のプエルトイロ(ペルー)の間の約5300キロを鉄道でつなぐ計画だ。
このいわゆる「両洋鉄道」が開通すれば、南米から中国への資源輸出の時間と費用は大幅に削減される。ブラジルから中国への穀物輸出のコストを1トン当たり約30ドル減らせる見込みだと、ブラジルの政府当局者は以前に語っている。ブラジルとペルーにとって、中国は極めて重要な貿易相手国だ。ブラジルは中国に鉄鉱石と大豆を大量に輸出しているし、ペルーの最大の輸出先(主な輸出品は金や銅などの
鉱物)は中国だ。
南米横断鉄道の計画は、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席が昨年7月にブラジルを訪ねたときに提案したものだ。今回、李はブラジルのジルマ・ルセフ大統領、ペルーのオジャンタ・ウマラ大統領と相次いで会談し、鉄道計画の実現可能性を探る調査を開始することで合意した。
熱帯雨林を突っ切る経路
総建設費用は推計100億ドル。建設期間は6年を要する見込みだ。約5300キロのうち3200キロはブラジルを通る。AP通信によれば、ブラジルの建設業者が建設を受注する可能性が高いが、中国の業者も参加するかもしれない。
中国と南米の双方にとって、経済面の期待は大きい。景気が減速している中国は、原材料をこれまでより安価に、迅速に輸入できるようになる。
さらに「計画が適切に実行されれば、最も恩恵を受けるのは南米諸国だ」と、中国と南米の関係を研究しているボストン大学のケビン・ギャラガー准教授(国際関係論)は指摘する。「高速鉄道が通れば、輸出が拡大しているアジアへ物資を輸送しやすくなるし、南米大陸内の貿易も促進されるかもしれない」