偽物大国がもくろむ中国製ダライ・ラマ計画
まさかの転生終幕発言に慌てた共産党の真意とは? マルクスもびっくりの謀略がもたらす侵略の終焉
頭痛の種 中国にとってダライ・ラマは存在感があり過ぎる Arnd Wiegmann-Reuters
インド北部にダラムサラという地がある。ここに亡命チベット人は59年から政府を置いてきた。ブッダ生誕の地とは遠いが、敬虔な仏教徒であるチベット人はインドと共通した文明を擁してきたと自任し、安住の地としている。ここに中国が多くの諜報関係者を送り込んできた、と亡命政府は最近危機感をあらわにしている。スパイたちは誰よりも早く、ダライ・ラマ14世逝去のニュースをキャッチしようと虎視眈々とうごめいている。
そんななか期せずして、ダライ・ラマが転生制度は自分を最後に幕を閉じてもいいと発言し、中国を慌てさせた。中国は既に独自の「転生候補」を選ぶ体制を整えたようだ。3月に開かれた全国人民政治協商会議の記者会見で、民族政策とチベット問題を担当する政府高官の朱維群(チュー・ウェイチュン)が「ダライ・ラマの新しい転生を選ぶ唯一の合法的な機関は、中国共産党中央政府」と公言し、それを裏付けた。
「宗教はアヘン」と説くマルクスの死霊を震撼させるほどに中国共産党が変質してしまったのも、彼らが転生選びに「成功」した前例があるから。チベット仏教のもう1人の高僧、パンチェン・ラマ10世が89年1月に逝去した後、中国政府は遅々としてその転生の出現を認めなかった。「ヨーロッパの中世よりも暗黒なチベット仏教」の自然消滅を待つ姿勢を取った。
偽物と札束の無残な光景
業を煮やしたダライ・ラマはついに95年5月にチベットに住む6歳の少年をパンチェン・ラマ11世に認定したが、たちまち中国から拒否された。中国は少年と両親を誘拐して監禁しただけでなく、独自のパンチェン・ラマを擁立して今日に至る。中国共産党は宗教を否定する政策を転換させるどころか、チベット支配に宗教を有効利用しようとしている。