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外交

戦後70年を利用する中国の東アジア分断戦略

2015年1月8日(木)16時59分
河東哲夫(元外交官、外交アナリスト)

■ロシア この年の節目の1つが5月9日、第二次大戦でソ連がドイツに打ち勝った戦勝70周年記念日。モスクワの盛大な式典にどの首脳が出席するかが、国際政治のリトマス試験紙となる。米ロ関係が悪いままなら(多分そのようになるだろう)、アメリカはEUや日本の首脳に出席を控えるよう頼んでくる。

 EUや日本が欠席すれば、ロシアの孤立が如実になる。逆にアメリカに逆らってドイツやフランスの首脳が出席した場合、それはアメリカとEUの離間だけでなく、EU・ロシア・中国による「巨大ユーラシア連合」の成立という印象を与える。同じく安倍首相が出席すれば、日米関係に害が及ぶ。

 原油価格の低落が続けば、ロシアは経済的に難しい状況に置かれる。中国の支援を受ければ、真綿で首を絞めるように中国に組み敷かれていくだろう。だからロシアは、この記念日に西側首脳を引き込みたい。そのためには欧米に対してはウクライナ問題、日本に対しては平和条約締結問題で実を示さないといけない。そうすればロシアは没落や孤立を免れ、東アジアで相応の存在感を維持できるだろう。

■朝鮮半島 韓国や北朝鮮と日本との関係は、このような大国間外交の従属変数にすぎない。日中関係や日米関係が良ければ、韓国は日本との関係で前向きになる。逆に北朝鮮は中国、米国、韓国との関係が悪いと、日本に前向きになる。

■中国内陸部 中国の力はこれからも増大するだろう。だが、すべての力が海洋方面に向かうわけではなく、摩擦の種はむしろ長大な国境を抱えた内陸部にある。北方のロシアと今は関係がいいが、かつては広大な領土をロシア帝国に奪われた屈辱の記憶が消えない。

 西方でも不安定要素を抱えている。中国が天然ガス需要の1割強を依存するパイプラインはトルクメニスタンからアフガニスタン国境近辺を通るが、この地域において新疆ウイグル自治区のイスラム過激派がテロを仕掛けると危ないことになる。

 中国というと東アジアでの海・空軍の活動を思いがちだが、むしろ留意すべきは北方や西方における陸軍の動向だ。

 中国も案外大変なのだ。GDPが日本の3倍になって、やっとバランスが取れる程度──そう捉えられる冷静な視点と余裕が日本に求められている。

[2015年1月13日号掲載]

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