戦後70年を利用する中国の東アジア分断戦略
アメリカ主体の軍事・経済的安定に対抗し、荒波を立てる中国の国力をどう評価すべきか
急膨張 今年も中国が東アジア情勢のカギを握る Anventtr-iStockphoto
今年の東アジア情勢で、日中関係は最大の動因の1つだろう。中国がGDPで日本を抜いてはや5年。急激な円安で、ドル換算で日本の倍になる勢いだ。
とはいえ、日本経済の存在感は揺るいでいない。世界2位のODA(政府開発援助)供与額を維持し、直接投資は途上国にもろ手を挙げて歓迎されている。
日中関係を見る際には2国間の経済分野だけでなく、地政学的に本質を捉える視点が欠かせない。日中のバランスを取り持ってきたのは、実質的に最大の「アジアの国」であるアメリカだ。08年のリーマン危機でその地位が沈むまで、東アジアは安定していた。政治方面で余計な荒波を立てずに、「現状維持」と「自由貿易」の2大原則に徹することができたのは、アメリカの経済力と軍事力があってこそだ。
その下で日中韓やASEAN(東南アジア諸国連合)は、アメリカやEUと相互依存関係を深め繁栄してきた。また今後はTPP(環太平洋経済連携協定)も、米議会がオバマ大統領に交渉を一任する法案を通せば強力な後押しとなり、東アジアでの自由貿易体制を強化することだろう。
この数年、「現状維持」と「自由貿易」に波風を立ててきたのが中国だ。しかし習近平(シー・チンピン)国家主席は周永康(チョウ・ヨンカン)を除去して公安部門と石油閥を握り、徐才厚(シュイ・ツァイホウ)を逮捕して軍を掌握した。習の国内基盤は堅固となり、積極的な外交に打って出る状況が整った。
今年を占う3つのヒント
ASEANに友好姿勢をアピールする一方、日本に対しては戦後70周年を喧伝して巧妙に牽制するだろう。中国お得意の微笑外交をもってASEANやアメリカから日本を引き離し、孤立化、無力化する戦略だ。
日中以外に今年の東アジアを占うヒントは3つ。「ロシア」「朝鮮半島」「中国内陸部」だ。