この程度の民主化なら国名をビルマに戻せ
野党のスー・チーを大統領選から締め出し、少数民族の弾圧を続けるこの国が民主国家か
軍事独裁? 経済成長率は高いが民主化が伴わない(ヤンゴン) Lam Yik Fei-Bloomberg/Getty Images
先月のASEAN首脳会議で、オバマ米大統領はミャンマー(ビルマ)のテイン・セイン大統領に改革推進を求めた。だが改革は本当に進むだろうか。
野党のアウン・サン・スー・チー党首が次期大統領選に立候補できる可能性は、ほぼ閉ざされてしまった。米企業は対ミャンマー経済制裁を嫌って、シンガポールに拠点を置いている。
この2年間に国を追われた西部のロヒンギャ族(イスラム教徒の少数民族)は10万人以上に上る。10月半ばからだけでも1万5000人を超えている。
長年にわたり政権側と戦ってきた北部の少数民族カチン族との停戦合意は、成立した途端に政府軍の攻撃でほごになった。交渉担当者によれば、停戦交渉再開のめどは立っていない。
一方、来年の大統領選に出馬予定のトゥラ・シュエ・マン下院議長によれば、子供たちが外国籍であることを理由にスー・チーの大統領就任を禁じる条項と、軍部に拒否権を与える条項に関する憲法改正は、新議会が招集された後に議論するそうだ。
つまり5月の国民投票で憲法改正が支持されても、それが有効になるのは次の総選挙後ということ。スー・チーを大統領選から締め出せば、トゥラ・シュエ・マンが当選する確率は高まる。「慌てて改憲して失敗するほどの余裕はない」と彼は言う。
まるで、その前に行われていたオバマとスー・チーの会見をあざ笑うかのようではないか。オバマはスー・チーの出馬禁止を「意味がない」とし、スー・チーは改革には「ちょっと問題がある」と言っていたのだ。
また、ミャンマーの市場開放は違法な、あるいは違法性が疑われるビジネスの正当化に利用されただけとの批判がある。ミャンマーを第2の北朝鮮にしたくない──そんな一心の欧米が承認してくれたおかげで、軍関係者は軍服をスーツに着替えるだけで、半世紀にわたる軍部独裁の間にため込んだ富と特権を手放さずに済んだ。