イスラエルがこだわる「報復の原則」が生む悲劇
ネタニヤフはさらにパレスチナ自治政府のアッバス議長にまで怒りの矛先を向けている。アッバスは誘拐を非難し、イスラエルの捜査に協力してきた。それなのに「誘拐がパレスチナで起きたのなら自治政府の責任だ」と、ネタニヤフ政権の閣僚は言う。イスラエルの報復の原則に基づいた、一方的なこじつけだ。
こうしたパレスチナに対する挑発は単なる脅しではない。6月中旬以降、イスラエルはハマス掃討作戦を展開している。
イスラエル軍はパレスチナ自治区ヨルダン川西岸ヘブロン一帯を1週間にわたって封鎖。家宅捜索を実施し、400人以上の身柄を拘束した。少年らを誘拐したとみられる2人の家を、家族が住んでいるのに爆破(容疑者は発見できず)。さらにガザ地区への空爆も開始し、「ハマスが止めないなら、われわれが阻止する」とネタニヤフは息巻いた。
そして、今度はパレスチナ人の少年が殺害された。犯人はイスラエル人と決まったわけではない。それでも報復の報復を恐れるイスラエル当局はパレスチナ人に対し、むやみにユダヤ人を非難しないよう要求した。
3人の少年が消息を絶った後、イスラエルが怒りに駆られず、もっと自制してさえいれば......。いや、もっと早くに報復の原則を捨てていれば、4人の若い命が犠牲になることはなかっただろうか。残念ながらそうとも言い切れない。だが報復合戦を永遠に続けることでイスラエルが救われるとも思えない。
© 2014, Slate
[2014年7月15日号掲載]