世界で後退する民主主義
プーチンも中国が頼り
近年の状況を見る限り、ヨーロッパやアジア、北米アメリカなど世界中で民主主義がうまく機能していないようだ。
アラブの春が起きた11年、人々は独裁体制に対して立ち上がった。だがそれ以降の混乱は、民主主義がもっと多くを与えてくれないことへの失望が原因になっている。
今年だけでもボスニア、バングラデシュ、ベネズエラ、アイスランド、カンボジア、トルコなど多くの国で暴動や抗議行動、大規模デモが起きた。デモの件数だけでなく、それに参加する人の数も増えている。
専門家らによると、06〜13年に100万人以上が参加したデモは37件あったとみられる。インドで行われたデモの一部は、史上最大規模だった可能性がある。世界では現在、歴史上例のない規模で社会不安が起きていて、それが収束していく気配もない。
中国でもデモなどの抗議活動が急増している。しかしそれは主に地上げや環境問題が原因で、民主化などの政治的要求を掲げるものはゼロに近い。
それでも中国共産党がこの25年間、政治的な締め付けの手を緩めたことはない。それどころか彼らは今や、世界一莫大な資金力と権力を持つ政党になった。
ソ連と共に歴史のゴミ箱行きになるどころか、中国の共産主義体制と「権威主義的資本主義」という独特の経済システムは、欧米型民主主義に代わり得る最も強力な体制と考えられている。
ウクライナ問題でロシアが欧米の制裁を受けたとき、プーチンが頼りにしたのも中国だった。先月中国を公式訪問したプーチンは、ロシアから中国に天然ガスを輸出する大型契約をまとめることに成功。ロシアは向こう30年間、総額40兆円相当を確保できることになった。
89年6月、中国政府は民主化を求める人民を弾圧するという許されない罪を犯した。あれから25年がたった今、最大の皮肉は世界の民主主義体制がふらつくなか、中国の独裁体制は当時の責任を問われることもなくピンピンしていることだろう。