最新記事

東欧

ウクライナ「チョコレート大統領」の評判

ウクライナの新大統領は腐敗した金満実業家かそれとも戦略と現実主義を兼ね備えた救世主か

2014年6月10日(火)16時21分
ダリア・ソロビエワ

改革への期待 分離独立派との対決姿勢を明らかにしたポロシェンコ新大統領 David Mdzinarishvili-Reuter

 先月末のウクライナ大統領選挙で勝利を収めたペトロ・ポロシェンコ(48)に、一部から早くも失望の声が上がっている。

 ウクライナからの分離を求める親ロシア派が集中する東部ドネツク州の州都ドネツクでは、実業家のポロシェンコは大富豪というだけで非難の的だ。

「彼は腐敗したオリガルヒ(新興財閥)だ。私は信用しない」と、ある市民は言う。東部の多くの住民にとって、ポロシェンコの当選は、親ロシア派を抑圧しようとする裕福な少数派の勝利を意味する。

 開票結果が発表された選挙翌日、ポロシェンコはドネツクなど東部の都市で親ロシア派武装勢力の掃討作戦を強化すると宣言した。「投票前は平和的に交渉すると言っていたのに、今は空爆だ」と、ドネツクの分離独立を支持するダニイルは言う。「私の家は(親ロシア派が立て籠もる)空港のそばだ。窓を開けるのが怖い」

 だが、菓子メーカー「ロシェン」の創業者で「チョコレート王」の異名を持つポロシェンコは、ウクライナ西部で厚い支持を集める。政治の行き詰まりを打開し、経済を救う方法を見いだせる、経験豊かな現実主義者とみられているからだ。
「人々は彼がいい指導者になり、なんらかの改革が起きると思っている」と、政府の腐敗を調査するウェブサイトの編集長アレクセイ・シャライスキーは言う。

 一方で、ポロシェンコは腐敗そのものではないかと疑う人もいる。多くの投機的事業を手掛けており、2月のヤヌコビッチ前政権崩壊までウクライナを支配していた親ロシア政党「地域党」とも関係しているからだ。

 ポロシェンコのチョコレート帝国はロシア、ハンガリー、カザフスタン、中国に及び、傘下には運送、不動産、メディア企業もある。政治家として前大統領を含め何代もの政権で働いたことがあり、国内のオリガルヒにも顔が利く。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、ハマスが人質リスト公開するまで停戦開始

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中