最新記事

領土問題

ベトナム反中デモに油を注いだ「低賃金」への怒り

中国以外の工場も燃やされたベトナムは、製造業の進出先としてまだ大丈夫か

2014年5月29日(木)13時46分
ジョシュア・キーティング

見境なし 15を超える外資系企業の工場が放火された Thanh Tung Truong-Reuters

 先週、ベトナムで反中デモが暴徒化し、外資系の工場が相次いで襲撃された。デモの目的はベトナムと中国が領有権を争う西沙(パラセル)諸島付近に、中国が石油掘削施設を設置したことに対する抗議だった。だが被害を受けた工場の中には、中国系だけでなく台湾系や韓国系も多く含まれていた。背景には劣悪な労働条件に対する怒りもあったとみられる。

 かつて「世界の工場」と呼ばれた中国だが、近年は賃金水準が上昇し、製造業の拠点はベトナムなど賃金がより低い東南アジア諸国に移っている。ベトナムも好景気のおかげで賃金は上昇しつつあるが、単純労働者の平均月給は約100ドル。中国の約3分の1の水準だ。

 中国の製造業も工場をベトナムに移しており、中国の昨年の対ベトナム投資額は23億ドルに上った。政治的な緊張は続いているが、中国は依然、ベトナムにとって最大の貿易パートナーだ。

 今後、中国の野心的な領土政策がベトナムの中国系企業の収益に影響を及ぼす可能性もある。とはいえ今回の暴動では、両国の争いにまったく関係のない国々までもが高い代償を払うことになってしまった。

© 2014, Slate

[2014年5月27日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

フジHD、純利益7割減 フジテレビ広告収入減で下方

ビジネス

武田薬、通期の営業益3440億円に上方修正 市場予

ビジネス

ドイツ銀行、第4四半期は予想以上の減益 コスト削減

ビジネス

キヤノン、メディカル事業で1651億円減損 前12
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 3
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? 専門家たちの見解
  • 4
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 7
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 8
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 9
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 10
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 7
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 8
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 9
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 7
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 8
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 9
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中