それでも台湾学生運動は統一を阻止できない
国民党の譲歩を引き出したかにみえる「ひまわり学生運動」の成果は限定的なものに過ぎない
勝者は誰か 議場から退去する前、報道陣に一礼する学生たち Pichi Chuang-Reuters
中国とのサービス貿易協定をめぐり、台北の立法院を占拠していた台湾の学生たちが先週、立法院長の譲歩発言を受けて議場から退去した。学生たちの「ひまわり学生運動」は一定の成果を挙げ、中台統一は選択肢から外れた......ように見える。
だがこうした見方は間違っている。むしろ今回の動きで統一のプロセスが進む公算が大きい。
なぜか。まずひまわり学生運動の3つの課題を見ておこう。決定プロセスの透明性を欠く密室政治の改革、中台のサービス貿易協定の承認阻止、さらに台湾企業の中国進出に伴う産業の空洞化阻止──いずれの課題も達成できそうにない。
確かに、台湾の政治システムを検証する必要があるという学生たちの訴えを人々は支持し、中台関係の今後について議論を深める機運が生まれた。しかし成果はその程度だ。
密室政治の改革は困難だ。アメリカでさえ、政策の変更は内部関係者の協議で決まることが多い。台湾では与野党共に密室で交渉したがる。台湾の政治文化に深く根差したこの慣行を変えられるか......「ミッション・インポッシブル」だ。
さらに、この運動が本質的に問い掛けたのは独立か統一かだ。
貿易協定に反対している人たちの多くは、協定発効で中国が台湾に及ぼす政治的影響が強まることを警戒している。しかし、仮に学生たちの運動で発効を阻止できたとしても、中台統一に向けた動きまで阻止できるかといえば、まず無理だろう。
グローバル化は止まらず
台湾のジレンマは、中国に頼るしか長期的な経済発展の道がないことだ。独立派の陳水扁(チェン・ショイピエン)前総統時代に対中関係が冷え込んだため、台湾経済は多くの基幹産業が韓国に追い越された。たとえ台湾がTPP(環太平洋経済連携協定)に参加できても、アメリカは台湾の輸出と投資を吸収できるほど大きな市場を提供できない。
中国と比べて経済規模があまりに小さく、軍事力はあまりに弱い──これが台湾の悲劇だ。いずれ中国に吸収される運命だとまでは言わないが、何らかの形で中国と前向きの関係を築く必要があるのは明らかだ。